「おねーちゃーん！おはよー！」



　ルーファウスとタークスメンバーが生活する家に元気な少年の声が響き渡った。



「んだよ、朝っぱらから…」



　うとうとしていたレノは、不機嫌な顔で起き上がった。



　明け方に帰ってきて、ようやく眠りに落ちようかというところだったのに。



　舌打ちしたレノは、窓から身を乗り出し、玄関付近を見た。



　そこにいたのは、ヒロインだった。



「ごめん、もうちょっと待って。あ、ここじゃ寒いでしょ。中でココアでも飲む？」



　何よりも心地よく、癒される声音にレノの表情は自然と柔らかくなる。



「ありがと、お姉ちゃん！」



　レノと同じように少年の顔もぱぁっと明るくなった。



　少年はヒロインと手を繋ぐと、嬉しそうに玄関をくぐった。



「何だ、あのガキ…」



　やたらとヒロインに懐いている少年に軽い嫉妬を覚え、レノは今日二度目の舌打ちをした。



　すっかり眠気も吹き飛んでしまい、レノはベッドには戻らず、階下に降りた。





　台所に顔を出すと、ヒロインがココアを作っているところだった。



　鼻歌まで歌っている。



　こっちには全く気付いていない。



　レノはわざとらしく咳払いをしてみた。



「あら、おはよう、レノ」



　いつもの調子の挨拶だ。



　普段なら何とも感じないが、今日は何故だか胸がざらざらする。



「ちょっと待ってて。コーヒー淹れるわ」



　ヒロインはカップにたっぷりミルクを注ぐと、ダイニングにそれを運んでいった。



　後回しにされたレノは当然面白くない。



　しかも、おはようのキスもなしだ。



　完全に不貞腐れたレノは、自分でコーヒーを淹れ始めた。



「はぁ…朝から気分は最悪だぞ、と」



　こんなことなら窓から覗いたりしなければよかったと、レノは心の底から後悔した。



.