後に『ジェノバ戦役』と呼ばれる戦いから数か月が経った。



　ヒーリンに移動したヒロインとタークス一行は、忙しい日々を送っていた。



　レノとルードは復興支援、ツォンとイリーナは情報収集で世界を飛び回っている。



　ヒロインはヒーリンに残り、ルーファウスの世話を任されていた。





「すまないな」



　包帯の取り替えを終えたヒロインにルーファウスが言った。



　ヒロインはにっこり笑い、首を振った。



「私には、これぐらいしかできませんから」



　ヒロインは自分の無力さを痛感していた。



　ジェノバからは解放されたが、すっかり力も体力もなくなり、今では普通人以下になっていた。



　おかげで遠出すらままならず、こうしてヒーリンでルーファウスと共に療養生活を送る身になっている。





「本当はレノと一緒にゆっくりしたいのだろう？」



　意地の悪い笑いを含んだルーファウスの問いにドキリとし、ヒロインは片付けの手を止めた。



「そういうわけじゃ…」



　口では否定しつつも、ルーファウスに言われたことは図星であった。





　あの戦いの後、レノの元に戻ってから二人の時間は皆無だった。



　ルーファウスを探したり、ミッドガル復興の手伝いをしたり――それはもう忙しい毎日だった。



　世界が大変な時だから仕方ない。



　そう自分に言い聞かせてはいたが、内心寂しかったのも事実だ。



　それを見抜かれたヒロインは決まりが悪くなり俯いた。



「困らせてしまったな」



　ルーファウスは苦笑した。



「そのお詫びと言ってはなんだが、明日は休息日にしよう。たまには二人で過ごすといい」



　ルーファウスの粋な提案に、ヒロインの胸は踊った。



「ありがとうございます！」



「皆にもそう伝えてくれ」



　ヒロインは深々と礼をし、ルーファウスの私室を後にした。





「お休み、か」



　何をしようか考えていると、自然と笑みが浮かんだ。



　ヒロインは軽い足取りで自室に戻った。



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