「どうして止めたんですか！？」



　レノの思った通り、イリーナは行き場を失った怒りを向けてきた。



　レノは肩を竦めた。



「あいつらに関わったんじゃ、折角の休暇が台無しだろ」



「でも、任務を遂行するチャンスだったんですよ！？」



「休暇を犠牲にして任務を全うしても、それは成功とは言えん」



　ルードの言葉に、レノはその通りだと頷いたが、イリーナは納得がいかないらしい。



　不満げな顔をしている。



「でも…私はプロです」



　如何なる場合でも、任務を優先してこそプロだと、イリーナは言う。



　レノは呆れて溜息をついた。



「本当のプロってのは、仕事と遊びは分けるんだぞ、と。全部犠牲にして、仕事だけしてるのは、ただの『仕事バカ』だ」



「納得できません！」



　尚も強情に自分の意見を曲げないイリーナに、レノはお手上げだとルードに視線を遣る。



　ルードは軽く眉根を寄せたが、仕方ないとばかりにイリーナに向き直った。



「イリーナ、休めるときに休んでおけ」



「ルード先輩まで…！でも、私…」



　イリーナの意志が揺らぎ始めた。



　もう一押し。



　レノが口を開こうとした矢先、またしても邪魔が入った。



「休暇で来ていると言うのは本当だったんだな！」



「悪いが、手を貸してくれ！我々だけでは、奴を追い切れん」



　バタバタと埃を上げて入ってきたのは神羅兵だった。



　レノは不愉快を通り越して、怒りを顕にして神羅兵を睨んだ。



「他当たれよ、と」



「先輩！？」



　イリーナが非難めいた視線を寄越したが、レノは構わず続ける。



「知っての通り休暇中だ。わかったら出て行ってくれ」



「なっ！こ、このことは報告しておくからな！」



　レノの迫力に気圧されていた割に、神羅兵はしっかりと捨て台詞を残して去って行った。



「ほら、イリーナ。飲み直すぞ、と」



　煩いのがようやくいなくなったので、レノはイリーナにメニューを差し出した。



　すると、イリーナがバン！とテーブルを叩いて立ち上がった。



「先輩たちの考えは理解できません！私一人で行きます！」



　レノたちが制止する間すらなく、イリーナは神羅兵を追って店を飛び出した。



「どうするんだ？」



「放っとけよ、と。もうガキじゃないんだからな」



　レノはまだまだ若い後輩を思い、溜息をついた。



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