神羅の軍用ヘリでウータイに乗り付けたレノたちは、居酒屋亀道楽に直行した。



　昼間から酒を飲むのかと、イリーナは渋い顔をしたが、付き合いよく同席した。





「先輩！せっかくウータイに来たんですから、観光しましょうよ、観光！」



　あまり酒を飲む方ではないらしいイリーナは、お腹が満足するとしきりに「観光」を口にしだした。



　しかし、レノとルードは観光など端からするつもりはない。



　たまの休みに活動的に動く気には、どうもなれない。



「観光なんかいつでもできるだろ」



「お酒こそ、どこでだって飲めます！」



　確かにそうだ、とレノは思ったが、口には出さなかった。



　下手に同意すれば、イリーナの思う壺だ。



　それはごめんだと思い、レノはイリーナを黙らせる先制攻撃を仕掛けた。



「ウータイにまで来て、カリカリすんなよ。そんなんじゃ、ツォンさんに嫌われるぞ、と」



　一言余計なことを付け加え、レノはにやりと笑った。



「なっ！何でツォンさんが出てくるんですか！？」



　イリーナが顔を真っ赤にして怒鳴った。



「イリーナ、静かにしろ」



　辺りにいた客の視線を集めてしまったことに気付いたルードが嘆息した。



　はっとしたイリーナが、ぱっと口を押さえる。



　しばらく気不味そうに小さくなっていたイリーナだったが、客たちが興味を失い、視線を外した途端、目をすっと細め、レノを睨んだ。



「どうして、そういつも突っ掛かってくるんですか！？ヒロインのことが上手くいかないからって、私に当たらないでください！」



　レノは思わず眉を吊り上げた。



「んだと…！」



　声音も自然と低く唸るようなものになる。



　確かにヒロインとは上手くいっていないが、イリーナにとやかく口出しされる謂われはない。



　ピリッと周囲の空気が張った。



　しかし、イリーナは屈することなく、果敢に睨み続けてきた。



　レノは益々苛立ち、舌打ちした。



　後輩のくせに可愛げがない。



　レノは乱暴にタバコを引き抜き、口にくわえた。



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