銃声。



　悲鳴。





　いろいろな音が幾重にも重なり、鼓膜を震わせる。



　音に取り囲まれているような感覚に陥ったヒロインは、平行感覚を失い、その場に倒れた。



　途端に溢れ返っていた音が遠ざかり、ヒロインは無音の世界に落ちていった。















「ヒロイン！」















　ヒロインは、はっと目を見開いた。



　目の前にあったのは、人の足。



　それがいつもと違う見え方をしていることを認識して初めて、ヒロインは自分が倒れたことを知った。



「こいつ…統括が言っていた奴じゃないか？」



　上から降ってきた知らない男の声。



　ヒロインは視線だけを上に向けた。



（神羅兵…？）



　起き上がらなければ。



　そう意識しても、身体が重くて言うことを聞かない。



　こんな時に自由に動かせない自分の身体に苛立ちながら、それでもなんとか地面に手を突いたところで、突然ぐいと腕を引かれた。



「あぁぁっ！」



　その途端、全身を貫くような痛みに襲われたヒロインは、凄まじい悲鳴を上げた。



　目の前が白くなる。



「いい声上げやがる！」



　下卑た笑い声を上げた神羅兵の顔に残酷な笑みが浮かぶ。



「統括へのいい手土産だ」



　神羅兵が力任せにヒロインの腕を引っ張る。



「――っ！」



　左肩が裂けるように痛む。



　傷口も開いたのか、撃たれた箇所から血が溢れ出した。



　しかし、幸か不幸か、痛みのおかげで、熱のために朦朧としていた意識ははっきりしてきた。



　ヒロインは歯を食い縛って悲鳴を殺しながら、ホルスターから銃を抜いた。



「おい、引き上げ――」



　神羅兵が目を離した一瞬の隙を突き、ヒロインは銃のグリップを神羅兵の鳩尾に叩き込んだ。



　神羅兵は、その場で前のめりに倒れた。



「…少しは人の痛みを知りなさい」



　クラウドたちの方も戦闘が終わったようだった。



　ヒロインは立ち上がり、まだ若干よろめく足を叱咤し、クラウドたちの方に向かった。



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