「ヒロイン！早く！」



　尾翼から機体の上に移動したヒロインにティファが手を伸ばす。



　その矢先、ヒロインの眼前を銃弾が掠めた。



　銃弾が来た方向に機関銃を構えた神羅兵たちがいる。



　ヒロインはそちらに向かって、真っ直ぐ手の平を向けた。



「ブリザラ！」



　ヒロインの手から放たれた冷気が、タイニー・ブロンコと神羅兵の間に氷壁を作った。



「今だ！」



　クラウドが叫ぶと同時に、機体が浮いた。



「待て！」



　タイニー・ブロンコに並走していたシドが左翼に掴まった。



「危ない！」



　神羅兵が上空に向けて機関銃を構えている。



　それを見たヒロインは、シドを引き上げようと手を伸ばす。



　ヒロインとクラウドは、力任せにシドを引っ張り上げた。



　機関銃から放たれた銃弾が、左翼に一直線に命中した。



「おいおい…やべぇぞ！」



　急に青くなったシドが、慌てて機内に乗り込んだ。



　神羅兵を振り切り、空に飛び立ったタイニー・ブロンコが、突然安定を欠いた。



　機体が左に傾く。



　危うく滑り落ちそうになったヒロインは、クラウドに身体を支えられることで、何とか転落を免れた。



　ほっとしたのも束の間、次に銃弾を受けた左翼から白煙が吹き上がる。



　そこでやっと、二人はシドが血相を変えた理由を知ることになった。



「もしかして…」



「あぁ、墜ちるな」



　こんな時でも冷静なクラウドの神経の太さにヒロインは半ば呆れる。



　しかし、確実に高度を落とし、近づく水面を目にしたヒロインには、既に誰かに構う余裕はなかった。



（墜ちる！！）



　ヒロインはぎゅっと目を瞑り、必死で機体にしがみついた。










　ザバーン！










　頭から海水を被ったところで、ヒロインは自分がまだ生きているのを知った。



「助かった…」



　ヒロインは白くなった手から力を抜いた。



.