レノとイリーナがオフィスに入ると、既にルードが待っていた。



「「おはようございます」、と」



　レノとイリーナは同時にツォンのデスクを見たが、そこに目当ての人物はいなかった。



　今日任務を説明すると言っていたにも関わらず、肝心のツォンがいないのはどういうわけか。



　レノはルードに目を向けた。



　すると、ルードが無言で一枚の紙を差し出した。



　レノはそれを受け取り、視線を紙に落とす。



　脇からイリーナが覗き込んできたので、レノは少し手を下げてやった。





「ウータイで休暇！？」





　タークスには馴染みのない単語をいち早く見つけたイリーナが、すっとんきょうな声を上げた。



　さすがのレノも、この内容は予想していなかった。



　初めは悪い冗談かと思ったが、今、手にした書類は正式な体裁で書かれているので、正規の物に間違いない。



「どういうことだ…？」



　レノはルードに視線を送った。



「社長直々の命令だそうだ」



　ルードの返答に、レノは軽く眉を上げた。



　あからさまにタークスを遠ざけるやり方は、悪意すら感じられる。



　ルーファウスは、余程タークスとヒロインを接触させたくないらしい。



「ツォンさんはどこへ？」



　イリーナが身を乗り出してルードに迫ると、ルードはたじろいだ様子で身体を引いた。



「…さぁな。休暇は我々三人だけだと聞いている」



　それを聞いたイリーナは、落胆して肩を落とした。



（分かりやすい奴だな…）



　それがイリーナのいいところでもあるのだろうが。



　レノは、ぽんとイリーナの頭に手を置いた。



「ま、文句言っても仕方ないな」



　レノはそう自分に言い聞かせた。



「遠慮なく休ませてもらうぞ、と」



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