2-14:疑念
ヒロイン
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嗅覚を刺激した女物の香水の匂いに、レノはうっと息を詰まらせた。
好みの匂いでないそれは、不快でしかない。
カツカツとハイヒールを鳴らし、腰をくねらせ近づいてくる女の姿が目に入ったが、レノは一瞥しただけで、無視を決め込んだ。
厚い化粧、派手で露出の高い服、きつい香水、甘えるような口調――どれも爽やかな朝には相応しくない。
そもそも、レノには声を掛けてきた女に心当たりがなかった。
いや、何か関係はあったのだろうが、記憶にないというのが正しいかもしれない。
さらに苛立ちを増進する要因が増え、レノは舌打ちした。
「ねぇ、いつ帰ってきたのぉ?連絡してよぉ」
擦り寄ってくる女を避けるように、レノは一歩身を退いた。
そして、何事もなかったかのような顔をして無視を決め込む。
女はむっと頬を膨らませ、これでもかとばかりにレノの目の前に立ちはだかった。
「レノったら!」
「レノ先輩!」
女の声に重なって、後輩の声が聞こえてきた。
願ってもない助け船を絶妙なタイミングで出してくれたことに対し、レノはイリーナを心の中で誉め讃えた。
「よぉ、イリーナ」
レノはわざとらしくイリーナに手を振った。
イリーナの顔が強ばったのは言うまでもない。
イリーナのおかげでその場をやり過ごせたレノは、ほっとするのと同時に香水の匂いを吐き出すように大きく息をついた。
「よくやったぞ、と」
「何をですか?」
さっぱりわからないと、イリーナが首を傾げた。
「っていうか、先輩、朝からテンションおかしいですよ?」
あんな爽やかに手を振られても気持ち悪いだけ。
と、イリーナにはっきりと言われ、レノはむっとする。
「お前のツォンさんへの猫撫で声と、いい勝負だぞ、と」
そう負けじと言い返すと、イリーナの眉が吊り上がる。
「猫撫で声なんか出してません!」
「あー、はいはい」
朝からキンキン喚かれ、レノはおどけた仕草で耳を塞いだ。
「ほら、エレベーター来たぞ、と」
レノはイリーナの頭を小突き、エレベーターに乗り込んだ。
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好みの匂いでないそれは、不快でしかない。
カツカツとハイヒールを鳴らし、腰をくねらせ近づいてくる女の姿が目に入ったが、レノは一瞥しただけで、無視を決め込んだ。
厚い化粧、派手で露出の高い服、きつい香水、甘えるような口調――どれも爽やかな朝には相応しくない。
そもそも、レノには声を掛けてきた女に心当たりがなかった。
いや、何か関係はあったのだろうが、記憶にないというのが正しいかもしれない。
さらに苛立ちを増進する要因が増え、レノは舌打ちした。
「ねぇ、いつ帰ってきたのぉ?連絡してよぉ」
擦り寄ってくる女を避けるように、レノは一歩身を退いた。
そして、何事もなかったかのような顔をして無視を決め込む。
女はむっと頬を膨らませ、これでもかとばかりにレノの目の前に立ちはだかった。
「レノったら!」
「レノ先輩!」
女の声に重なって、後輩の声が聞こえてきた。
願ってもない助け船を絶妙なタイミングで出してくれたことに対し、レノはイリーナを心の中で誉め讃えた。
「よぉ、イリーナ」
レノはわざとらしくイリーナに手を振った。
イリーナの顔が強ばったのは言うまでもない。
イリーナのおかげでその場をやり過ごせたレノは、ほっとするのと同時に香水の匂いを吐き出すように大きく息をついた。
「よくやったぞ、と」
「何をですか?」
さっぱりわからないと、イリーナが首を傾げた。
「っていうか、先輩、朝からテンションおかしいですよ?」
あんな爽やかに手を振られても気持ち悪いだけ。
と、イリーナにはっきりと言われ、レノはむっとする。
「お前のツォンさんへの猫撫で声と、いい勝負だぞ、と」
そう負けじと言い返すと、イリーナの眉が吊り上がる。
「猫撫で声なんか出してません!」
「あー、はいはい」
朝からキンキン喚かれ、レノはおどけた仕草で耳を塞いだ。
「ほら、エレベーター来たぞ、と」
レノはイリーナの頭を小突き、エレベーターに乗り込んだ。
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