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2-13:欠落

ヒロイン

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ヒロイン

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白の研究所の生き残り

 通路の先には、ヒロインのよく知る装置があった。



 人一人が優に収まる大きさの培養装置。



 その一つは内側から破壊され、すぐそばにガラス片が散乱していた。



「私が聞いたのは、これが割れた音?」



 ヒロインは恐る恐るその装置に近づいた。



 埃を被り、手入れされた様子もないそれは、廃棄されて久しいようだった。



「実験…?」



 自分がされたのと同じような実験が、ここでも行われていたのだろうか。



 ヒロインは近くの棚に無造作に置かれた書類の束を手に取った。



「実験レポートね」



 そこに書かれていたのは、被験者に施された実験の数々とその結果だった。



 ジェノバ細胞の移植、投薬――おぞましい人体実験の内容は、目を覆いたくなるものばかり。



 あまりの不快感に、ヒロインは顔をしかめた。



「一体、ここで何が――」



 レポートに被験者名は記されていない。



 被験者がどうなったかもわからない。



 ヒロインが知り得たのは、ここで何かの実験が行われていたという事実だけ。



 これ以上の調査を諦め、部屋を出ようとしたとき、培養装置が目に入った。



「被験者の名前…もしかしたら――」 



 ヒロインは培養装置に近づいた。



 その装置には、思った通り金属板プレートが取り付けられていた。



 ヒロインは手で埃を払い、そこに書かれていた文字を読んだ。



「サンプル、Z…?」





 手が、震えた。



 喉がカラカラに干上がる。





 ヒロインは知っていた。



 そのイニシャルを持つ人物を。





「まさか…」



 ヒロインは笑い飛ばそうとしたが、上手くいかなかった。





――直接俺を手に掛けた奴はもういない





「こんなの――」





 ヒロインは手に持っていたレポートを取り落とした。



 クリップが外れ、床にレポートが散らばる。



 我に返り、掻き集めたレポートの1枚を目にしたヒロインに突き付けられたのは、残酷な現実だった。





 サンプルZ、ソルジャークラス1st。





「ザックス、なの?」



 ヒロインは、その場から動けなかった。



 ヒロインの覚えている太陽のように明るいザックスの笑顔が陰り、暗く冷たい闇に沈んだ。



To be continued...


2008/03/19


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