神羅ビルの屋上に着陸したヘリコプターから降りたレノたちを迎えたのはツォンだった。



　どうやらゴンガガから戻ったらしい。



　高慢なスカーレットの相手をするのはさぞ大変だったのだろう。



　ツォンの顔には色濃く疲労が浮かんでいた。



「ご苦労だったな」



　ツォンさんこそ、と言おうとしたレノを遮り、イリーナが明るい声を出した。



「いえ、お気遣いありがとうございます！」



　さっきまで寝ていたくせにゲンキンな奴だと、レノは溜息をついた。



「今日はこれで帰っていい。話は明日する」



　ツォンはそれだけ告げると、去って行った。



　残された３人は、互いに顔を見合わせた。



「帰っていいと言われてもな…」



「まだ、正午過ぎです」



　腕時計に目を落としていたイリーナが言った。



　レノは空を見上げた。



　太陽はちょうど真上にいる。



　こんな時間に帰れることはまずない。



　しかし、普段から夜ばかり行動するレノにとっては、ありがた迷惑な話だった。



　普段行くような店はまだ開いていない。



　暇を持て余すのは目に見えていた。




「また明日」



　暇つぶしにルードとどこかに行くつもりだったレノは出鼻を挫かれ、頭を掻いた。



　疲れているのか、いつも以上に口数の少ない相棒を止めるのは憚られ、そのまま見送った。



「お前はどうするんだ、と」



　レノはイリーナに視線を落とした。



「うーん…私も帰ります。さすがに疲れました」



　お疲れ様ですと軽く頭を下げたイリーナも、足早にヘリポートを下りていった。





「どうすっかな」



　一人残されたレノは、再度空を見上げた。



　冬の空は夏のように突き抜けた青空ではなかったが、それでもレノを活動的にするには十分だった。



　このまま帰って寝るのは勿体ない。



　家に一人でいると、余計なことまで考えそうだ。



「久しぶりに遊びに行くか」



　レノはヘリポートを後にした。



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