2-12:決別
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「そんなに自分を卑下するもんじゃないよ」
老人が明るく笑った。
てっきり軽蔑されるものだと思っていたヒロインは、予想外の反応に戸惑った。
「でも、私…」
「人間はずるく醜い生き物じゃ。しかし、過去を省み、より清く正しい道へ進もうとするのもまた人間だがの」
老人が挑むようにヒロインの目を真っ直ぐ見た。
「さて、お嬢さんは過去を省み、進むことができる人間かな」
「私は…」
ヒロインはテーブルの下で固く拳を握った。
「もちろん、逃げるのはよくないが、進むことまで許されないわけではない。時には前に進む勇気も必要じゃよ」
老人の言葉は、ヒロインの胸に染み入った。
立ち止まっていた場所から動けそうな気がして、ヒロインは顔を上げた。
「彼は、許してくれるでしょうか?」
「それは自分が一番よくわかっているのではないかね?彼の最後の言葉を受け取ったのだから」
――ヒロイン、ごめん
最後、そう言って研究員は微笑んだ。
ずっと心に黒い染みとなっていた研究員の言葉と笑みが、初めてヒロインの中に色を付けて収まった。
本来の姿を取り戻したかのように、いつになくヒロインの心には穏やかな風が吹いていた。
「私、進めそうです」
晴れやかな笑顔で言うと、老人も目尻を下げた。
「そうか、よかったの」
「本当にありがとうございました」
ヒロインは深々と頭を下げた。
「なぁに、老人の節介じゃ。礼を言われるほどではない」
老人が酒瓶を手に取った。
「新たな出発に乾杯といこう」
ヒロインは杯を両手で持ち、酌を受けた。
杯同士がぶつかり、軽やかな音を立てた。
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老人が明るく笑った。
てっきり軽蔑されるものだと思っていたヒロインは、予想外の反応に戸惑った。
「でも、私…」
「人間はずるく醜い生き物じゃ。しかし、過去を省み、より清く正しい道へ進もうとするのもまた人間だがの」
老人が挑むようにヒロインの目を真っ直ぐ見た。
「さて、お嬢さんは過去を省み、進むことができる人間かな」
「私は…」
ヒロインはテーブルの下で固く拳を握った。
「もちろん、逃げるのはよくないが、進むことまで許されないわけではない。時には前に進む勇気も必要じゃよ」
老人の言葉は、ヒロインの胸に染み入った。
立ち止まっていた場所から動けそうな気がして、ヒロインは顔を上げた。
「彼は、許してくれるでしょうか?」
「それは自分が一番よくわかっているのではないかね?彼の最後の言葉を受け取ったのだから」
――ヒロイン、ごめん
最後、そう言って研究員は微笑んだ。
ずっと心に黒い染みとなっていた研究員の言葉と笑みが、初めてヒロインの中に色を付けて収まった。
本来の姿を取り戻したかのように、いつになくヒロインの心には穏やかな風が吹いていた。
「私、進めそうです」
晴れやかな笑顔で言うと、老人も目尻を下げた。
「そうか、よかったの」
「本当にありがとうございました」
ヒロインは深々と頭を下げた。
「なぁに、老人の節介じゃ。礼を言われるほどではない」
老人が酒瓶を手に取った。
「新たな出発に乾杯といこう」
ヒロインは杯を両手で持ち、酌を受けた。
杯同士がぶつかり、軽やかな音を立てた。
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