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2-12:決別

ヒロイン

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ヒロイン

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白の研究所の生き残り

 クラウドたちが部屋を出てから少し時間を置いて、ヒロインは部屋を出た。



 地面から伝わるひんやりとした冷気が心地よい。



 横穴を掘って整えただけの簡素な住みかだったが、ここはヒロインの知るどんな場所よりも温かだった。



 壁に触れれば、土と岩盤から自然の温もりが伝わってくる。



「素敵…」



 ミッドガルの人工物しか知らないヒロインにとってはどれも新鮮だった。



 目に映り、手に触れる一つ一つの感触を楽しみながら、ヒロインは階段状に整えられたものを下りた。



「もういいのかね?」



 そこには、必要最低限の明かりに照らされながら一人杯を傾ける老人がいた。



「はい。お世話になりました」



 階段を下り切ったヒロインはテーブルに近付き、頭を下げた。



「お嬢さんはいけるクチかね?一杯いかがかな?」



「いただきます」



 老人の言葉に甘え、ヒロインは向かい側に腰を下ろした。



 杯を受け取り、注がれた酒を軽く一口飲む。



「おいしい!」



「ほほ、これはコスモキャニオンの酒でな。外には出回らない幻の酒じゃ」



 老人は楽しそうに笑うと、自分も杯を干した。



 ヒロインは老人の杯に酒を注ぐ。



「何か悩んでおるみたいじゃの。酒の勢いで話してみんか?」



 悪戯っぽく笑った老人に吊られ、ヒロインも笑みを溢した。



「そうですね――」



 ヒロインは一度視線を下に向けた。



 思案する中、真っ先に思い浮かんだのは、皮肉にも研究員だった。



 ヒロインは一度息を吐くと、少しずつ話し始めた。



「いろんなことがありました」



 5年前のことから今に至まで、自分に起こったことを掻い摘んで話した。



 老人はヒロインの話に適度に相槌を打ちながら、酒を飲んでいた。



研究員が死ぬまで、彼のことをどれだけ大事に思ってたか忘れてたんです。それなのに、他の人を好きになって――いろんなことを受け入れられなくて、逃げて…自分がこんなにもずるくて醜いんだって気付かされた」



 一度流れだした思いは、堰を切ったように言葉になって溢れ出た。



「本当…もう、最低ですよね…」



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