ルードの視線を避けるように、レノはホテルのロビーに向かった。



　いくつかある休憩用のソファに腰を下ろし、タバコに火を点ける。



　もう夜も遅く、ロビーにはほとんど人はいない。



　いても一目でタークスとわかるレノに近づく者など誰もいなかった。



　レノはタバコをくゆらせながら、肘置きに腕を乗せ頬杖を付いた。




（ルードの言う通りだな）



　感情の赴くまま言葉を並べて、自分で関係を壊した。



　確かに今取り消せば、ヒロインは何も言わず許してくれるだろう。



　禍根を残しながらも、全部無理矢理押さえ込んで笑ってくれるはずだ。



　しかし、レノはそんな上辺だけの関係を再構築したくはなかった。



　それに、またあの「研究員」を語るヒロインを前にして、冷静でいられる自信もない。



　かと言って、ヒロインを傷付けたままにしておきたくもない。



「どうしたもんかな…」



　普段あまり考え事に使わない頭をフル回転させ、レノはヒロインとどうやって話をする機会を作るか考えた。










「…先輩！」



　すぐ近くから聞こえたイリーナの声に驚き、レノははっと顔を上げた。



「悪ぃ…で、わかったか？」



「クラウドたち、コレルプリズンに送られたそうです」



　ヒロインのことを伝えようとしたが、園内にいるはずのクラウドたちの行方がわからない。



　そこでイリーナに探させていたのだった。



「厄介だな、と」



　コレルプリズンは天然の砂漠の牢獄。



　入るのは容易ではないし、足を踏み入れたくなかった。



「あ、でも、もうすぐ戻るそうです。あと、スパイからの情報で、次の目的地が分かりました」



　イリーナが得意げに自分の得た情報を話すのを聞き、レノはソファから立ち上がった。



「先回りするぞ、と」



　レノは携帯を取り出した。



「あの、ヒロインのことは…」



「…園長のディオに頼んでおけ」



「…はい」



　イリーナはそれ以上何も言わずに、ディオのところに駆けていった。



　レノは仕事を言い訳に、思考を断ち切った。



　時間が解決すると、自分に言い聞かせて。



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