これから同居生活を始めることになったレノとヒロインの二人は、街に出て生活必需品の買い出しをしていた。





「服でしょ、下着に靴下、靴…これぐらいあれば、当面は大丈夫ね」



　車の後列シートやトランクに大量に詰め込まれた戦利品の数々を眺め、ヒロインが満足そうに頷く。




　散々買い物に付き合わされたレノは、ややげっそりしながら運転席でタバコを吸っていた。



（女の買い物には付き合うもんじゃないな…）




　バックミラーに映る買い物袋の山を見て、レノはやれやれと肩を竦めた。








「あー楽しい！こういう生活、憧れてたの」




　最後に買った服を後部に詰め込み終えたヒロインが助手席に乗り込んできた。



　解放感からか、その顔は昨日とは打って変わったように生き生きしている。




　これが本来のヒロインの姿なのだろうとレノは思う。



　今の自由を満喫しているヒロインを見ていると、タークスに入れたくないというツォンの気持ちがよく分かる。



　できることなら、本来の意味で普通の生活を送ってもらいたいと思う。




（何とかならねーかな…）




　本人がタークス入りを希望している以上、仕方がないと言えばそれまでだが。











「…ノ。レーノ！」




　深く考え事をしていたレノは、ヒロインの呼び掛けで現実に引き戻された。



「あ、悪ぃ。どうしたんだ、と」




「あのね、家具買わなきゃと思って。一緒に寝るわけにいかないし…」




　きっぱりと別々に寝ましょうとヒロインに宣言され、レノはいささか肩透かしを食らった気分になる。




（昨日はあんなに積極的だったのにな…）




　ヒロインに振り回されっぱなしでらしくないが、たまには振り回されてみるのも面白いか。




「ごめんね、付き合わせちゃって」



　自分に気を遣っているヒロインに気遣い無用とレノは笑う。




「いや、構わないぞ。家事してもらったしな」



　レノは上機嫌で車を家具屋へと走らせた。



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