2-10:別離
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
レノの腕に抱かれ、その隙間から見ていた。
ザックスの大剣が、研究員の身体を裂いた瞬間を。
研究員が倒れるのを見て、ほっと胸を撫で下ろしたことも、はっきり覚えている。
ヒロインは耳を塞ぎ、激しく頭を振った。
その右手を研究員が掴み上げた。
「お前が殺したんだ!」
「嫌っ!やめて!」
血走った研究員の目がヒロインを睨む。
研究員の口や身体から流れ出ていた血は、いつの間にか止まり、綺麗に消えていた。
しかし、ヒロインは研究員を直視できず、俯き目を逸らした。
「私じゃない!私はあなたのこと――」
「今更何言ってるの?どうせ俺に同情しているだけだろ!?自分の実験台だった俺に!そうやって自分を慰めてるだけだ!」
ヒロインは身体を震わせた。
ヒロインの持つ感情が『同情』だと研究員に看破されて。
「忘れていたくせに…手頃な男に逃げたくせに――」
研究員の手に力が加わり、ヒロインは手首に走った鈍い痛みに顔をしかめた。
「ヒロインは俺を裏切ったんだ!」
研究員が鬼のような形相になり、ヒロインの首に左手を掛けた。
そして顔を寄せ、囁いた。
「直接俺を手に掛けた奴はもういない。あの男も助けにこない。もちろん、俺はヒロインを助けるつもりなんてない」
「もういないって…どういう――」
ヒロインは眉をひそめ、引っ掛かったことを口にした。
しかし、途端に喉を圧迫され、声が詰まった。
喉元を潰すように押さえ付けられ、声どころか空気すら通らない。
思案していたことはもう頭の片隅にすら残っていなかった。
「これで、全部なくなったね」
にぃっと、研究員が口の端を持ち上げた。
(全部、なくなった…)
靄がかかり始めた頭に、はっきりとその言葉だけが残った。
研究員が最期に残した言葉も思いも、霞んで消えた。
「それがわかったら、俺のところにもう一度おいで」
薄れゆく意識の中、真っ暗闇に一人堕ちていく自分の姿を遥か遠くに見ながら、ヒロインは目を閉じた。
.
ザックスの大剣が、研究員の身体を裂いた瞬間を。
研究員が倒れるのを見て、ほっと胸を撫で下ろしたことも、はっきり覚えている。
ヒロインは耳を塞ぎ、激しく頭を振った。
その右手を研究員が掴み上げた。
「お前が殺したんだ!」
「嫌っ!やめて!」
血走った研究員の目がヒロインを睨む。
研究員の口や身体から流れ出ていた血は、いつの間にか止まり、綺麗に消えていた。
しかし、ヒロインは研究員を直視できず、俯き目を逸らした。
「私じゃない!私はあなたのこと――」
「今更何言ってるの?どうせ俺に同情しているだけだろ!?自分の実験台だった俺に!そうやって自分を慰めてるだけだ!」
ヒロインは身体を震わせた。
ヒロインの持つ感情が『同情』だと研究員に看破されて。
「忘れていたくせに…手頃な男に逃げたくせに――」
研究員の手に力が加わり、ヒロインは手首に走った鈍い痛みに顔をしかめた。
「ヒロインは俺を裏切ったんだ!」
研究員が鬼のような形相になり、ヒロインの首に左手を掛けた。
そして顔を寄せ、囁いた。
「直接俺を手に掛けた奴はもういない。あの男も助けにこない。もちろん、俺はヒロインを助けるつもりなんてない」
「もういないって…どういう――」
ヒロインは眉をひそめ、引っ掛かったことを口にした。
しかし、途端に喉を圧迫され、声が詰まった。
喉元を潰すように押さえ付けられ、声どころか空気すら通らない。
思案していたことはもう頭の片隅にすら残っていなかった。
「これで、全部なくなったね」
にぃっと、研究員が口の端を持ち上げた。
(全部、なくなった…)
靄がかかり始めた頭に、はっきりとその言葉だけが残った。
研究員が最期に残した言葉も思いも、霞んで消えた。
「それがわかったら、俺のところにもう一度おいで」
薄れゆく意識の中、真っ暗闇に一人堕ちていく自分の姿を遥か遠くに見ながら、ヒロインは目を閉じた。
.