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2-9:渇望

ヒロイン

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ヒロイン

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白の研究所の生き残り

 いらない。



 ヒロインが拒絶したのは、研究員でも他の誰でもなく、紛れもなく自分だった。



 ヒロインのその一言は、レノを絶望の際まで追い込むには十分過ぎた。





 互いに信じ合い、思い合っていると思っていた。



 レノがヒロインに注ぐのは、他の誰にも向けたことのない深い愛。



 それが偽りでなかったからこそ、ヒロインに会える日を待ち続けた。



 待ち続けていられた。



 それは、ヒロインも同じだと思っていた。



 しかし――




 ヒロインの心は、宝条の一言で簡単に研究員に揺らいだ。





 5年前のあの日から信じてきたものは一体何だったのか。




 今まで拠り所にしていたものが突然消え失せ、レノは眩暈を覚えた。





 死して尚、ヒロインを煩わせる研究員以上に、レノは自分を裏切ったヒロインに対して憎しみに近いものを感じていた。



 きつく握った拳が、ぶるぶると震え出す。




(いっそ――)



 思っているから、裏切られて苦しい。



 思っている人がいるからこそ悩む。



(なくなれば――)



 煩わしいものは、消してしまえばいい。




 いつもそうやってきた。



 何も特別なことではない。




 そう。



 ヒロインも――




 レノは、ゆっくりとヒロインに向かって、一歩踏み出した。





















ヒロイン!」





 レノははっと我に返った。



 レノより早くヒロインの元に駆け付けたのは、クラウドとエアリスだった。



 レノは慌てて重なり合うパラソルの陰に身を潜めた。




(今、何をしようとした…?)



 レノは震える自分の手の平を見つめ、その手で顔を押さえた。



(何考えてんだ…!)



 自分の中に眠っていた禍々しいまでの独占欲。



 殺してヒロインの心を支配しようとした病的なまでのそれに、恐れ慄いた。



 レノはそれ以上ヒロインを直視できず、その場を逃げるように離れた。



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