2-9:渇望
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運搬船が汽笛を鳴らしコスタ・デル・ソルに入港した。
どうせすぐには下りてこないと思い、レノは殊更ゆったりとした足取りで港に向かった。
(水着、ねぇ)
ビーチの若者を面白くなさそうに見ていたレノの頭に、水着姿のヒロインが浮かんだ。
黒い髪に白い肌。
そんなヒロインに似合うのは――
「白だな」
思わず思いついたことを零してしまったが、それが叶わぬものだと知っているがために、言いようのない虚しさを感じる。
重い溜息をついて、レノはビーチに送っていた視線を港に向けた。
「ヒロイン…」
前を歩いていたルードが首だけ振り返ったが、何も言わずに再び前を向いた。
レノたちが港に到着すると、早速運搬船から荷物が運びだされていた。
そのどれもに付着した赤黒く変色した血が、運搬船内の惨劇を物語っていた。
隣ではイリーナが青冷めた顔でそれらを見、口を押さえている。
着任早々の新人には刺激が強すぎたか。
「気分悪いなら休んでろよ、と」
強がりなイリーナのこと、こちらから言わない限り休まないだろうと気を利かせたが、イリーナはそれでも強情に首を振った。
レノは小さく溜息をつくと、「そうか」と小さく言って運搬船の搬入口に向かった。
「どんな様子だ、と」
先に中に入っていたルードに声を掛けると、ルードはレノのためにゆっくりと身体をずらした。
「…」
そこはまさに惨劇の場。
血と大量の死体しかなかった。
(これを、ヒロインが…?)
レノはただ茫然とするしかなかった。
現場を見ても、ますます信じがたい。
「レノ、これを」
ルードに呼ばれ、レノは我に返った。
意識を仕事に戻し、ルードの指差す先を見る。
「これは…刀傷、か?」
自分が知る限り、ヒロインは刀剣の類は一切使わない。
「あぁ。ただ――」
「こいつらを斬ったのは剣の素人、だろ」
逃げ場のない現実を突き付けられ、レノは混乱する頭を落ち着かせようとタバコに火を点けた。
(ヒロインが、殺した――)
レノは目を伏せ、深くまで吸い込んだ煙を吐き出した。
.
どうせすぐには下りてこないと思い、レノは殊更ゆったりとした足取りで港に向かった。
(水着、ねぇ)
ビーチの若者を面白くなさそうに見ていたレノの頭に、水着姿のヒロインが浮かんだ。
黒い髪に白い肌。
そんなヒロインに似合うのは――
「白だな」
思わず思いついたことを零してしまったが、それが叶わぬものだと知っているがために、言いようのない虚しさを感じる。
重い溜息をついて、レノはビーチに送っていた視線を港に向けた。
「ヒロイン…」
前を歩いていたルードが首だけ振り返ったが、何も言わずに再び前を向いた。
レノたちが港に到着すると、早速運搬船から荷物が運びだされていた。
そのどれもに付着した赤黒く変色した血が、運搬船内の惨劇を物語っていた。
隣ではイリーナが青冷めた顔でそれらを見、口を押さえている。
着任早々の新人には刺激が強すぎたか。
「気分悪いなら休んでろよ、と」
強がりなイリーナのこと、こちらから言わない限り休まないだろうと気を利かせたが、イリーナはそれでも強情に首を振った。
レノは小さく溜息をつくと、「そうか」と小さく言って運搬船の搬入口に向かった。
「どんな様子だ、と」
先に中に入っていたルードに声を掛けると、ルードはレノのためにゆっくりと身体をずらした。
「…」
そこはまさに惨劇の場。
血と大量の死体しかなかった。
(これを、ヒロインが…?)
レノはただ茫然とするしかなかった。
現場を見ても、ますます信じがたい。
「レノ、これを」
ルードに呼ばれ、レノは我に返った。
意識を仕事に戻し、ルードの指差す先を見る。
「これは…刀傷、か?」
自分が知る限り、ヒロインは刀剣の類は一切使わない。
「あぁ。ただ――」
「こいつらを斬ったのは剣の素人、だろ」
逃げ場のない現実を突き付けられ、レノは混乱する頭を落ち着かせようとタバコに火を点けた。
(ヒロインが、殺した――)
レノは目を伏せ、深くまで吸い込んだ煙を吐き出した。
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