2-7:提案
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「私が社長の所に行くこと、誰も知らないのよね」
エレベーターの中、ヒロインが視線を下に向けたまま言った。
「いや。あいつに会ったから、ちょっと借りてくって言っておいた」
「エアリス?」
ヒロインがやっと顔を上げた。
レノは少しほっとして、口元に笑みを浮かべた。
「『ヒロイン泣かせたら、絶対に許さないから!』って言ってたぞ、と」
似てはいないと自覚していたが、エアリスの口調を真似て言うと、ヒロインがぷっと吹き出した。
「レノ、それ全然似てない」
お腹を抱えて笑うヒロインに対し、わざと口を尖らせてみせる。
「失礼な奴だな」
「だって…」
目元に涙まで浮かべてヒロインが笑う。
レノはそんなヒロインの様子を見ながら、ちくりと胸が痛んだ。
自分が迎えに来たことでヒロインが傷ついたのではないか。
一抹の不安が過る。
あくまで自然を装うヒロインが逆に不自然に映る。
いやに饒舌なのも、笑顔を絶やさないところも、全てが作られたもののような気がして、レノの心が鈍い音を立てて軋んだ。
「レノ」
ヒロインの声で我に返り、レノは伏せていた目をヒロインに向けた。
「どうかしたか?」
「あ…ううん、何でもない」
「…そうか」
何か切り出そうとして口を噤んだヒロインに、やはり何かあるとレノは確信する。
しかし、表面上和やかな雰囲気を壊したくなかったので、レノは敢えて問いただすことはしなかった。
ヒロインもそのまま黙りこくってしまい、話はそこで終わった。
レノはヒロインを見ないように軽く背を向け、きつく拳を握った。
今は、聞く時期ではない。
そう自分に言い訳をして。
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エレベーターの中、ヒロインが視線を下に向けたまま言った。
「いや。あいつに会ったから、ちょっと借りてくって言っておいた」
「エアリス?」
ヒロインがやっと顔を上げた。
レノは少しほっとして、口元に笑みを浮かべた。
「『ヒロイン泣かせたら、絶対に許さないから!』って言ってたぞ、と」
似てはいないと自覚していたが、エアリスの口調を真似て言うと、ヒロインがぷっと吹き出した。
「レノ、それ全然似てない」
お腹を抱えて笑うヒロインに対し、わざと口を尖らせてみせる。
「失礼な奴だな」
「だって…」
目元に涙まで浮かべてヒロインが笑う。
レノはそんなヒロインの様子を見ながら、ちくりと胸が痛んだ。
自分が迎えに来たことでヒロインが傷ついたのではないか。
一抹の不安が過る。
あくまで自然を装うヒロインが逆に不自然に映る。
いやに饒舌なのも、笑顔を絶やさないところも、全てが作られたもののような気がして、レノの心が鈍い音を立てて軋んだ。
「レノ」
ヒロインの声で我に返り、レノは伏せていた目をヒロインに向けた。
「どうかしたか?」
「あ…ううん、何でもない」
「…そうか」
何か切り出そうとして口を噤んだヒロインに、やはり何かあるとレノは確信する。
しかし、表面上和やかな雰囲気を壊したくなかったので、レノは敢えて問いただすことはしなかった。
ヒロインもそのまま黙りこくってしまい、話はそこで終わった。
レノはヒロインを見ないように軽く背を向け、きつく拳を握った。
今は、聞く時期ではない。
そう自分に言い訳をして。
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