――ねぇ、目覚ましなよ







　ぱち。






　誰かに呼ばれた気がして、ヒロインは目を覚ました。



　見慣れぬ白い天井。


　薄暗い部屋。




（あぁそうか…私――）




　徐々に甦る昨日の記憶。



　ゆっくりと身体を起こしたヒロインは、大きな欠伸をしながら伸びをした。








「レノ…？」




　リビングに続くドアを開け、部屋の主を呼ぶ。



　光が差し込む部屋はあまりに眩しく、ヒロインは思わず目を細めた。




「レノ？」




　返事が聞こえないことに不安になり、明るさに慣れてきた目で部屋を見回す。




　すると、テーブルに朝食と思われるものと、手紙のようなものが目に入った。



「レノ…の字？ぷっ…汚い字ねぇ」



　昨日話して得た自分の中のイメージと、実際のレノが思ったとおりだったこともあり、ヒロインは思わず笑ってしまった。





『朝飯用意したから、それでも食って待ってろ。
　部屋のものは自由に使ってくれ。
　俺は仕事に行ってくる』



　そこまで読んで、ヒロインは首を傾げる。




「ん、仕事…？って、えぇ！？今何時！？」




　慌てて時計を探す。



　ヒロインが確認した時間は、11時。




「やだ、遅刻じゃない！どうしよう！もう、何で起こしてくれないのよー！」




　どうしようと呟きながら、あたふたと辺りを見回す。



「服…はないし、電話…は番号知らないし…あれ？」



　ぶつぶつ独り言を言いながらパニックになっていたヒロインは、手紙に続きがあることに気付いた。




『主任に、今日は休ませるって言っとくぞ』




「もう…そういうことは早く言ってよね」



　力が抜けたヒロインは、へなへなとソファに座り込んだ。



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