2-6:恋慕
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「その男は死んだ」
銀髪の青年が言った。
しかしヒロインは、首を横に振った。
研究員は動かない。
つい先程までかすかに脈打っていた身体は、ぱたりと生命活動を停止していた。
そこには、研究員が生きている証になるものなど、何一つない。
それでもヒロインは、その事実を受け入れられなかった。
目を閉じた研究員を、ただ見つめることしかできなかった。
「さっき…ごめんって、そう言ったの」
誰よりも自分を傷つけた人だった。
憎みすらした。
しかし、最期の瞬間その人がヒロインに対して抱いていた感情は、ヒロインが彼に抱いていたものと同じだった。
「どうしてよ…最期まで、憎ませてよ!」
憎むだけなら、どんなに楽だろう。
いつかは風化し、思い出の一つになるはずだった記憶は、ヒロインの心の深い傷となった。
研究員を恋い慕っていた過去を忘れていたこと。
研究員を信じられず、憎しみという最も楽な感情に逃げたこと。
(知らない…知らない――!)
ヒロインの呼吸が荒くなる。
(嫌…全部いらない――)
ヒロインは全てを嫌悪した。
研究員への感情も、それを知った自分すらも。
「――嫌。忘れたい…こんなこと、忘れて――」
「――お前の願い、叶えてやろう」
銀髪の青年の提案に、ヒロインははっとして顔を上げた。
「その代わり、条件がある」
ヒロインは、ぼんやり青年を見上げていた。
これを忘れさせてくれるなら、悪魔に魂を売ることすら躊躇わない。
「忘れさせて、全部――」
「いいだろう」
青年が満足気に笑った。
目の前にかざされた手を見つめ、ヒロインは目を閉じた。
(――これで、よかったのよね)
――時が来たならば、迎えに行く
さよなら、研究員。
.
銀髪の青年が言った。
しかしヒロインは、首を横に振った。
研究員は動かない。
つい先程までかすかに脈打っていた身体は、ぱたりと生命活動を停止していた。
そこには、研究員が生きている証になるものなど、何一つない。
それでもヒロインは、その事実を受け入れられなかった。
目を閉じた研究員を、ただ見つめることしかできなかった。
「さっき…ごめんって、そう言ったの」
誰よりも自分を傷つけた人だった。
憎みすらした。
しかし、最期の瞬間その人がヒロインに対して抱いていた感情は、ヒロインが彼に抱いていたものと同じだった。
「どうしてよ…最期まで、憎ませてよ!」
憎むだけなら、どんなに楽だろう。
いつかは風化し、思い出の一つになるはずだった記憶は、ヒロインの心の深い傷となった。
研究員を恋い慕っていた過去を忘れていたこと。
研究員を信じられず、憎しみという最も楽な感情に逃げたこと。
(知らない…知らない――!)
ヒロインの呼吸が荒くなる。
(嫌…全部いらない――)
ヒロインは全てを嫌悪した。
研究員への感情も、それを知った自分すらも。
「――嫌。忘れたい…こんなこと、忘れて――」
「――お前の願い、叶えてやろう」
銀髪の青年の提案に、ヒロインははっとして顔を上げた。
「その代わり、条件がある」
ヒロインは、ぼんやり青年を見上げていた。
これを忘れさせてくれるなら、悪魔に魂を売ることすら躊躇わない。
「忘れさせて、全部――」
「いいだろう」
青年が満足気に笑った。
目の前にかざされた手を見つめ、ヒロインは目を閉じた。
(――これで、よかったのよね)
――時が来たならば、迎えに行く
さよなら、研究員。
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