（嫌っ…思い出したくない！）




　忘れようとした、一番辛い記憶。





　全部、あの時捨てたはずだったのに。













　ヒロインは身体を抱き締めるようにして、その場に踞[うずくま]った。




（研究員…研究員…‥）












――失敗作は、処分しないと。















―― 一緒に死のう。






















――これで、さよならだ











　血塗れで蒼白な顔をした金髪の青年。



　ヒロインを見つめるその顔はとても穏やかだった。




　その最後の笑みが、ヒロインの心の隅に染みを作った。








　憎んでさえいた人は、過去自分が愛していた人――












　研究員の死を受け入れられず、あの時、最も簡単な選択肢へと逃げた。



　セフィロスが提示した条件を飲んで。







　靄のかかっていた記憶の一部が鮮明になったが、ヒロインはその精神的負荷に耐えられず、意識を手放した。












　絶叫し、身体を折ったヒロインを、クラウドたちはただ茫然と見ていた。



「さっきのは一体…」



　ティファが青冷めた表情でクラウドを見上げた。



「さぁな」



　軽く肩を竦めると、クラウドは剣を鞘に収めた。



「ヒロインっ」



　倒れたヒロインに真っ先に駆け寄ったエアリスは、ヒロインを抱き起こした。



　とても意識は戻りそうにない。



「俺がヒロインを連れてってやるよ」



　バレットがエアリスに声を掛け、地面に横たわるヒロインを担ぎ上げた。



「脱出するぞ！」



　クラウドは皆に声を掛け、ハイウェイの果てに向かって歩き出した。



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