静まり返った上層階にヒロインの足音だけが響く。



　社長が殺されたにも関わらず、不気味なほどの静寂に気味の悪さを感じながらヒロインは階段を駆け下りた。




　転ばないように、一段一段注意深く足を運ぶ。



　あともう少しというところ。



　しゅっという這うような音とともに、ヒロインの足首に何かが巻き付いた。



　突然の枷に危うく階段から転げ落ちそうになったヒロインは、寸でのところで手摺りに身体を預け、転倒を免れた。



　足に巻き付いていたのは蔓のようなもの。



　足首を締め付けられる痛みに顔をしかめながら、ヒロインは短銃を抜いた。



　そこにはめられた魔法マテリアが赤く煌めく。



「ファイア！」



　ヒロインの指先から放たれた炎の帯はまるで生き物のように蔓に向かって伸び、一瞬にしてそれを焼き切った。



「ギィィイ！！」



　脳天に響く甲高い声を上げて現れたのは、植物が誤った進化を遂げたような生物だった。



　ヒロインは魔物の姿を認めると、迷わず引金を引いた。



　魔物は声を途切らせ動きを止めると、そのままそこに倒れた。



「悪趣味な生き物を飼ってるのね」



　今倒した魔物が、セフィロスに破壊された科学部門のケージから溢れ出てきたのは明らかだった。



　それと同時に、神羅兵たちがこの後始末に追われていることも容易に想像できる。



　この機を利用しない手はない。



　まだヘリポートにいるだろうクラウドを待って、ヒロインは脱出することに決めた。




　ヒロインは脱出の準備を整えるため、再び静けさが満ちたフロアを探索した。



　棚や机、引き出し――ありとあらゆる場所をまさぐり、ヒロインは脱出に必要なだけの弾倉を補充する。



　誰もいないと思い、遠慮なく引き出しをひっくり返した音に混ざり、かすかに足音が聞こえた。



　ヒロインは手の動きを止め、持っていたガラクタを音を立てずに引き出しに戻した。



　そして、素早くトリガーに指を掛けると、そのまま振り返って銃口を音のした方に向けた。



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