2-4:記憶
ヒロイン
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ヒロインはふらふらと頼りない足取りで上へと向かった。
辿り着いたのは社長室。
長く豪奢な階段を上り切ったヒロインが見たのは。
銀髪の男が社長の背に長い刀を深々と刺した、その瞬間だった。
「!」
ヒロインは声を出すことすらできず、茫然と男を見ていた。
男はヒロインに気付くと、にやりと笑った。
「久しぶりだな」
長い服の裾をはためかせ、男はヒロインに近づいてきた。
逃げなければ。
意識の底ではわかっていたが、身体が全く動かない。
視線すら外せない。
男の圧倒的な存在感に押し潰されそうになる。
ヒロインは男の気に充てられ、その場に座り込んだ。
「覚えているか?」
男がヒロインを見下ろした。
ヒロインは男の目を見たまま、首を振った。
「そうか…」
男はさして気落ちした様子もない。
その余裕が、ヒロインにとっては何より恐ろしかった。
「あなた…支柱で助けてくれた人よね?」
ヒロインは震える自分を叱咤し、声を絞りだした。
その声は小さく、擦れていたが、男の耳には届いていたようで、男はふっと笑った。
「あれは私の力ではない。私はお前に眠る力の一端を引き出したにすぎない」
「私の…?まさか、ジェノバ――?」
ヒロインは思い当たった一つの事柄に青くなった。
男はそれを肯定するかのように静かに笑った。
「もうここに用はない。さぁ、行こうか」
差し出された男の手が、過去の記憶と重なる。
―― 一緒に逃げよう。
ヒロインに向けて伸ばされた手。
あの時はその手を取ることを選んだ。
今は――
「一緒には、行けない」
ヒロインははっきりと拒絶した。
「それならば、仕方ないな」
男がすっとヒロインの目の前に手をかざした。
不穏な気配が漂う。
男の長く細い指を見つめながら、ヒロインは逃げもせず、ただ一緒に行きたくないと強く願った。
.
辿り着いたのは社長室。
長く豪奢な階段を上り切ったヒロインが見たのは。
銀髪の男が社長の背に長い刀を深々と刺した、その瞬間だった。
「!」
ヒロインは声を出すことすらできず、茫然と男を見ていた。
男はヒロインに気付くと、にやりと笑った。
「久しぶりだな」
長い服の裾をはためかせ、男はヒロインに近づいてきた。
逃げなければ。
意識の底ではわかっていたが、身体が全く動かない。
視線すら外せない。
男の圧倒的な存在感に押し潰されそうになる。
ヒロインは男の気に充てられ、その場に座り込んだ。
「覚えているか?」
男がヒロインを見下ろした。
ヒロインは男の目を見たまま、首を振った。
「そうか…」
男はさして気落ちした様子もない。
その余裕が、ヒロインにとっては何より恐ろしかった。
「あなた…支柱で助けてくれた人よね?」
ヒロインは震える自分を叱咤し、声を絞りだした。
その声は小さく、擦れていたが、男の耳には届いていたようで、男はふっと笑った。
「あれは私の力ではない。私はお前に眠る力の一端を引き出したにすぎない」
「私の…?まさか、ジェノバ――?」
ヒロインは思い当たった一つの事柄に青くなった。
男はそれを肯定するかのように静かに笑った。
「もうここに用はない。さぁ、行こうか」
差し出された男の手が、過去の記憶と重なる。
―― 一緒に逃げよう。
ヒロインに向けて伸ばされた手。
あの時はその手を取ることを選んだ。
今は――
「一緒には、行けない」
ヒロインははっきりと拒絶した。
「それならば、仕方ないな」
男がすっとヒロインの目の前に手をかざした。
不穏な気配が漂う。
男の長く細い指を見つめながら、ヒロインは逃げもせず、ただ一緒に行きたくないと強く願った。
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