2-3:拘束
ヒロイン
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かたん。
普段なら気にも留めない小さな音に、ヒロインは過敏に反応した。
顔を上げて、音のした方に視線を遣る。
すると、椅子から立ち上がり、自身の腕時計に視線を落としていたツォンの姿が目に入った。
そして、一度考え込むように目を瞑ったツォンが小さな溜息をついた。
「まだ時間があるな…ヒロイン、レノに会いたいか?」
思いがけないツォンの提案に心臓が跳ねる。
「レノ、に…?」
擦れた声でヒロインはツォンの言葉を復唱した。
そうして耳に入った自分の言葉も疑わしい。
ヒロインは胸に手を当てた。
そこから忙しない鼓動がはっきりと伝わる。
「恐らく話はできないだろうが」
そうツォンは言ったが、迷う必要はなかった。
「お願いします!レノに会わせてください」
それは自分でも驚くほど幼い響きを帯びていて、ヒロインはぱっと口元に手を遣った。
まだ、こんな汚れていない感情があるなんて思ってなかった。
ヒロインはなんだか恥ずかしくなって、下を向いた。
レノに会える。
それだけでヒロインの気持ちは昂揚した。
あんな形での再会だったが、ヒロインの中でレノの存在は大きい。
ヒロインはまだ調子の戻らない身体に力を入れ、ツォンの後に続いた。
薄暗い廊下。
二人の足音だけが響く。
ここで初めて、自分が神羅ビル内の特別ブロックにいることを知った。
一般社員は入ることができない上、上級社員でも一部しか立ち入れないほど、厳重なセキュリティが施されている。
神羅にとって抹殺対象の自分が何故VIP待遇なのか疑問を抱きながらも、ヒロインはその疑問を口にはしなかった。
ヒロインのいた病室から左に出て、真っ直ぐ歩いた廊下の突き当たりでツォンが歩みを止め、振り返った。
「ここだ。――また後で来る」
短くそれだけ言うと、ツォンはヒロインの横を通り過ぎていった。
その背中を見送ってから、ヒロインは引き戸を開けた。
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普段なら気にも留めない小さな音に、ヒロインは過敏に反応した。
顔を上げて、音のした方に視線を遣る。
すると、椅子から立ち上がり、自身の腕時計に視線を落としていたツォンの姿が目に入った。
そして、一度考え込むように目を瞑ったツォンが小さな溜息をついた。
「まだ時間があるな…ヒロイン、レノに会いたいか?」
思いがけないツォンの提案に心臓が跳ねる。
「レノ、に…?」
擦れた声でヒロインはツォンの言葉を復唱した。
そうして耳に入った自分の言葉も疑わしい。
ヒロインは胸に手を当てた。
そこから忙しない鼓動がはっきりと伝わる。
「恐らく話はできないだろうが」
そうツォンは言ったが、迷う必要はなかった。
「お願いします!レノに会わせてください」
それは自分でも驚くほど幼い響きを帯びていて、ヒロインはぱっと口元に手を遣った。
まだ、こんな汚れていない感情があるなんて思ってなかった。
ヒロインはなんだか恥ずかしくなって、下を向いた。
レノに会える。
それだけでヒロインの気持ちは昂揚した。
あんな形での再会だったが、ヒロインの中でレノの存在は大きい。
ヒロインはまだ調子の戻らない身体に力を入れ、ツォンの後に続いた。
薄暗い廊下。
二人の足音だけが響く。
ここで初めて、自分が神羅ビル内の特別ブロックにいることを知った。
一般社員は入ることができない上、上級社員でも一部しか立ち入れないほど、厳重なセキュリティが施されている。
神羅にとって抹殺対象の自分が何故VIP待遇なのか疑問を抱きながらも、ヒロインはその疑問を口にはしなかった。
ヒロインのいた病室から左に出て、真っ直ぐ歩いた廊下の突き当たりでツォンが歩みを止め、振り返った。
「ここだ。――また後で来る」
短くそれだけ言うと、ツォンはヒロインの横を通り過ぎていった。
その背中を見送ってから、ヒロインは引き戸を開けた。
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