1-2:Kiss...
ヒロイン
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肩に入っていた力が抜けたように、ヒロインはよく笑い、よく飲んだ。
ピッチの早さは尋常ではない。
ウワバミと名高いレノも、ヒロインのペースにはついていけず、途中でペースを落とした。
ちびちび酒を呷っていたレノは、隣のヒロインが急に静かになったのに気付いた。
「おい、大丈夫か?」
気分でも悪くなったかと、レノはヒロインを覗き込む。
ヒロインは缶をきつく握り締め、それをじっと見つめていた。
「おい、ヒロイン…」
「私ね…逃げたの」
突然ぽつりとヒロインが漏らした一言に訳が分からず、レノは目を瞬く。
「もう、嫌になったの」
ヒロインは天井を仰ぐ。
レノはただ静かに、次の言葉を待った。
「一つ終われば、次の潜入先が待ってて、それが終わったらまた次……ずーっとそれの繰り返し」
ヒロインの目は虚空を見つめ、動かない。
「自分で選んだ道だったの。自分を押し殺して、任務を遂行するのは心地よかった。――居場所が出来たみたいで」
自嘲気味に笑ったヒロインが、レノの目には悲しく映った。
「好きでもない男に抱かれても苦痛じゃなかった。任務のためなら、何でもできた。でもね……」
ヒロインの手に力が入り、缶がわずかに音を立てて凹んだ。
「気付いたの。『私が』必要とされてるんじゃないって。代わりは幾らでもいる、って思ったら、急に怖くなって……っ!」
ぽろっと、一筋の涙が零れた。
その後は、タガが外れたようにヒロインは泣いた。
苦しみ、悩み、精神的にギリギリまで追い詰められていたのだろう。
同情とは別の感情で、レノはヒロインをきつく抱き締めた。
嗚咽を漏らし、震える背中を優しく撫でる。
「ヒロインの代わりなんていないぞ、と。これからは、俺がついててやる。もう無理するな」
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ピッチの早さは尋常ではない。
ウワバミと名高いレノも、ヒロインのペースにはついていけず、途中でペースを落とした。
ちびちび酒を呷っていたレノは、隣のヒロインが急に静かになったのに気付いた。
「おい、大丈夫か?」
気分でも悪くなったかと、レノはヒロインを覗き込む。
ヒロインは缶をきつく握り締め、それをじっと見つめていた。
「おい、ヒロイン…」
「私ね…逃げたの」
突然ぽつりとヒロインが漏らした一言に訳が分からず、レノは目を瞬く。
「もう、嫌になったの」
ヒロインは天井を仰ぐ。
レノはただ静かに、次の言葉を待った。
「一つ終われば、次の潜入先が待ってて、それが終わったらまた次……ずーっとそれの繰り返し」
ヒロインの目は虚空を見つめ、動かない。
「自分で選んだ道だったの。自分を押し殺して、任務を遂行するのは心地よかった。――居場所が出来たみたいで」
自嘲気味に笑ったヒロインが、レノの目には悲しく映った。
「好きでもない男に抱かれても苦痛じゃなかった。任務のためなら、何でもできた。でもね……」
ヒロインの手に力が入り、缶がわずかに音を立てて凹んだ。
「気付いたの。『私が』必要とされてるんじゃないって。代わりは幾らでもいる、って思ったら、急に怖くなって……っ!」
ぽろっと、一筋の涙が零れた。
その後は、タガが外れたようにヒロインは泣いた。
苦しみ、悩み、精神的にギリギリまで追い詰められていたのだろう。
同情とは別の感情で、レノはヒロインをきつく抱き締めた。
嗚咽を漏らし、震える背中を優しく撫でる。
「ヒロインの代わりなんていないぞ、と。これからは、俺がついててやる。もう無理するな」
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