魔晄炉爆破事件の２ヵ月前。




　ヒロインはミッドガルに戻った。






　５年前の事件以来、各地を転々としていたヒロインが最後に辿り着いたのは、皮肉にもミッドガルだった。






　ここミッドガルで一旗上げることを夢見る人々の流れに乗って、ヒロインは複雑な思いを抱きながらスラムに足を踏み入れた。








「レノ…」




　白の研究所の事件以降も、一瞬たりとも忘れることがなかった愛しい人。



　未だ記憶の中で色褪せないその人を思うたび、ヒロインの胸は切なく軋んだ。





　ここに戻れば会えるかもしれない。




　それが許されないことだとしても、ヒロインはそんな奇跡を願わずにはいられなかった。









　５年前と全く変わらないスラム街。




　いくつかのスラムを通りながら、ヒロインは５年前に思いを馳せる。





　潜入捜査の任務で反神羅組織に身を置いていたこと、レノに会ったこと、それから二人で過ごした日々。



　レノに会ってからの毎日はとても充実したもので、ヒロインの心を癒した。




　思い出せば思い出すほど、ヒロインの中でレノに会いたいという気持ちが強くなる。





「どうしてるのかな…」



　ふと立ち止まって一人ごちたヒロインは、頭上を覆う無機質なプレートを見上げた。



　今も上で働いているであろうレノに会うには、プレート上に上がるのが手っ取り早い。



　しかし、今のヒロインにはその手段がない。




「今更、会えるわけもないよね」



　自分が神羅に追われている事実は覆しようもなく、ヒロインは自嘲気味に笑ってその場を後にした。



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