1-12:Truth
研究員がふっと笑った。
「ありません。早くヒロインに飲ませてください」
レノは思ってもみない研究員の態度に、ますます不信感を募らせる。
「何企んでるんだ、と」
「何も。俺の実験は失敗だった、それだけです」
にっこり笑った研究員がレノに試験管を差し出した。
「本当にそれでヒロインは助かるんだな?」
「はい」
研究員の考えは全く読めなかったが、迷っている時間はなかった。
他に方法がない以上、賭けるしかない。
レノは研究員から試験管を受け取り、コルク栓を外す。
声を出すまいとしてか、血が出そうなほど歯を食い縛るヒロインに、レノは口を開けるよう言った。
「ヒロイン」
レノの言葉を聞き入れる余裕すらないのか、ヒロインは反応すら示さなかった。
荒い呼吸を繰り返すヒロインを見兼ねて、レノは自分の口に液体を流し込んだ。
そして、無理矢理ヒロインを引き寄せ口付けた。
ゆっくり、しかし確かにヒロインの口に液体を移していく。
ヒロインも少しずつではあるが、それを飲み込んでいった。
液体を飲ませ終えたレノは唇を放し、ヒロインの様子を伺った。
「ヒロイン、大丈夫か?」
魔力の靄はなりを潜め、ヒロインの表情も幾分穏やかになっていた。
握り締めていた手を広げ、全身の力を抜こうとヒロインが大きく深呼吸をした。
そして、目を開けたヒロインはいつものヒロインだった。
「これでもう外部からの刺激がない限り、ヒロインの中のジェノバ細胞は目覚めません」
ヒロインの様子を遠目から見ていた研究員が言った。
「ありがとう、研究員」
まだ本調子ではないヒロインは、レノに支えられながら研究員に頭を下げた。
一方レノは、落ち着いたヒロインに胸を撫で下ろしながらも、研究員を鋭く睨み付けた。
絶対に何かを企んでいる。
レノはそう確信していた。
それと同時に、レノの長年の経験が警鐘を鳴らし始める。
ザックスもいつでも剣を抜けるよう構えた。
一瞬、生暖かい風が頬を撫でた。
「さて、幕引きといきますか」
研究員が満面の笑みのまま、手にした小型のスイッチを押した。
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「ありません。早くヒロインに飲ませてください」
レノは思ってもみない研究員の態度に、ますます不信感を募らせる。
「何企んでるんだ、と」
「何も。俺の実験は失敗だった、それだけです」
にっこり笑った研究員がレノに試験管を差し出した。
「本当にそれでヒロインは助かるんだな?」
「はい」
研究員の考えは全く読めなかったが、迷っている時間はなかった。
他に方法がない以上、賭けるしかない。
レノは研究員から試験管を受け取り、コルク栓を外す。
声を出すまいとしてか、血が出そうなほど歯を食い縛るヒロインに、レノは口を開けるよう言った。
「ヒロイン」
レノの言葉を聞き入れる余裕すらないのか、ヒロインは反応すら示さなかった。
荒い呼吸を繰り返すヒロインを見兼ねて、レノは自分の口に液体を流し込んだ。
そして、無理矢理ヒロインを引き寄せ口付けた。
ゆっくり、しかし確かにヒロインの口に液体を移していく。
ヒロインも少しずつではあるが、それを飲み込んでいった。
液体を飲ませ終えたレノは唇を放し、ヒロインの様子を伺った。
「ヒロイン、大丈夫か?」
魔力の靄はなりを潜め、ヒロインの表情も幾分穏やかになっていた。
握り締めていた手を広げ、全身の力を抜こうとヒロインが大きく深呼吸をした。
そして、目を開けたヒロインはいつものヒロインだった。
「これでもう外部からの刺激がない限り、ヒロインの中のジェノバ細胞は目覚めません」
ヒロインの様子を遠目から見ていた研究員が言った。
「ありがとう、研究員」
まだ本調子ではないヒロインは、レノに支えられながら研究員に頭を下げた。
一方レノは、落ち着いたヒロインに胸を撫で下ろしながらも、研究員を鋭く睨み付けた。
絶対に何かを企んでいる。
レノはそう確信していた。
それと同時に、レノの長年の経験が警鐘を鳴らし始める。
ザックスもいつでも剣を抜けるよう構えた。
一瞬、生暖かい風が頬を撫でた。
「さて、幕引きといきますか」
研究員が満面の笑みのまま、手にした小型のスイッチを押した。
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