レノはヒロインの傷口に手を当てて、力を送り続けた。




　しかし、ヒロインが一向に目を覚ます気配はなかった。




　出血は治まったものの、依然としてヒロインの顔に生気はない。




　普通ならもう目覚めてもおかしくはなかった。
















――お願い、殺して！























　ふとレノの頭の中に、ヒロインの必死の叫びが響いた。





「ヒロイン、お前…このまま死ぬ気かよ…！」






　自然と声が詰まった。




　溢れ出しそうになる熱いものを無理矢理押し止め、レノは祈るように名前を呼んだ。








「ヒロイン！」










　俺を置いていくのか？
















　ぴくっとヒロインの指が動いた。




　はっとして、レノはヒロインを呼び続けた。












「ヒロイン？」




　レノの呼び掛けに応え、ヒロインの目がゆっくりと開いた。








　大丈夫か？


















　そう言いかけて、レノはヒロインの瞳に色濃い死の気配が漂っていることに気付いた。




　すぐそこまで上ってきた言葉を飲み下す。









　ヒロインが、死ぬ。















　それが最愛の人であるからこそ、受け入れがたい現実を前に、レノは自分の無力さを嘆くことしかできなかった。







「死ぬなよ、ヒロインっ…！」








　レノの悲痛な叫びだけが、静かな部屋に響き渡った。














































「レ、ノ…」
























　今一番聞きたかった声が耳に届き、レノは顔を上げた。









　そこには、気丈にも微笑むヒロインの姿があった。



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