ドッ！





　低い音が一度耳に響いた。






　刺さったか？






　辺りが静まり返り、レノはゆっくり目を開けた。




















「ヒロイン…？」














「怪我…‥な、い…？」








　にこっと微笑んだヒロインの身体が傾いだ。











「ヒロインっ！！」


















　それは一瞬の出来事。






　迫り来る殺気を感じたヒロインがレノの腕を抜け出し、前に躍り出て。







　そして。








　一本の氷の矢が、ヒロインを貫いた。












　一滴。








　二滴。











　静かに落ちていた血は、次第に滝のようにヒロインの身体から流れ落ち、床を汚した。








「何で…ヒロイン…」





　研究員が愕然とした表情でヒロインを見た。




　レノの方へ倒れこんだヒロインは、蒼白な顔をしていた。




　レノ自身、腕に抱くヒロインのかすかな鼓動を感じていなければ、恐らく死んでいると思っただろう。




「何で…どうして！ヒロインは…」



　自分のせいではないと頭を抱え、取り乱す研究員にレノは冷ややかな視線を送った。




　ヒロインを傷つけた研究員を殴ってやりたいのはやまやまだったが、レノは当然ヒロインを優先した。




　腕のバングルに付けていた回復マテリアが光る。



　そこから流れ出る淡く優しい光の帯が、ゆっくりヒロインを包み込んでいった。















「いらない…もう…‥」



　虚ろな目をし、狂ったように笑った研究員が、こちらを顧みる事無く、ふらふらと入口の方へと歩いていったことにすら、レノは気付かなかった。










「ヒロイン…戻ってこい」



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