「ヒロイン…」



　レノは力なく腕を下ろし、苦痛に顔を歪めるヒロインを悲しげに見遣った。




　守ると決めた。



　もう辛い目に遭わせないと誓ったのに。




「ヒロイン…俺は…」



　レノは自分の無力さが歯痒く、思わず視線を下に落とした。




「あははは！俺の完成した作品には例えソルジャーといえど適いませんよ！…さて、無駄話は終わりにしましょうか」



　研究員の視線を感じ、レノははっとして目を向けた。



　その途端、全く別の方向からものすごい圧力の攻撃がレノを襲った。



　受け身を取る間もなく吹き飛ばされ、壁に打ち付けられる。



「くっ…」



　尋常ではない力に押され、したたかに打った背中が痛む。



　呼吸すらままならない状態で、レノは攻撃を加えた相手を見つめた。




「ヒロイン…」



　幾分先程より収縮したオーラを纏うヒロインを、レノは悲しげに見上げた。







　手を伸ばせば届く距離。








　すぐ目の前に、追い求めた愛しい人がいた。







　しかし、ヒロインが見つめる先に自分はいない。





　虚ろな目を向けられているだけ。






「俺は、どうしたらお前を救ってやれる？なぁ、ヒロイン？」






　自分の喉元に伸ばされたヒロインの細い手を払うこともせず、レノはただ真摯にヒロインを見つめた。








　レノの首に、ヒロインの指が掛かる。








「何を言っても無駄ですよ。ただの殺戮人形ですから。――さぁ殺せ」




　鼻で笑った研究員の声は、レノに届いてはいなかった。




　しかし、無情な研究員の命令を忠実に実行しようと、ヒロインが手に力を込める。











（もう、俺の声は届かないんだな）













　レノはヒロインに優しく微笑んだ。






































「ヒロイン、愛してるぞ、と」






　そのままレノは、ゆっくりと目を閉じた。



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