「ねぇレノ、早く行きましょう」



「あぁ」



　レノと呼ばれた赤毛の男は、女に気のない返事をした。





　今日のお相手は神羅カンパニー秘書室一美人と名高い女性。


　幾度となく二人で食事をし、体を重ねもした。



　女の方はレノを恋人と思っている。


　しかし、レノにとって彼女は、数多の関係した女性の中の一人でしかない。



　その気持ちの差がレノには重く、けだるくのしかかっている。




　内心煩わしく思いながらも、今晩の相手に作り笑いを向けて誘った。







「今日あの子がね…」



　女性はレノの腕に自分の腕を絡め、後輩の失敗を面白可笑しく話している。



　時折艶めかしい視線を送ったり、豊かな胸をレノの腕に押しつけたり…



　あの手この手で誘ってきたが、レノは見向きもせずに煙草を吹かしていた。



　女性の話も適当な相槌を打つだけで、自分から話すことはない。




（ルードを誘って、飲みに行った方がよかったな、と）




　ぼーっと、そんなことを考えていたとき。



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