「あなた、誰？」



　私の発した言葉に、目の前の女性は目を大きく見開いた。








　白で覆われた空間の中、一際目立つ黒。

　黒スーツを身につけた小柄で金髪の女性は、どうやら私の同僚らしい。

　名前はイリーナ。


　そして、ここは病院らしい。




　……



　思い出せない。



「名前、わかる？」


　イリーナは不安そうな目を私に向ける。



　名前…私の……？



　ゆっくりと記憶を呼び起こそうと、視線を空に向け考える。



「…ヒロイン」



　出てきたのは一つの答え。


　そう。

　私の名前はヒロイン。


　それを聞いたイリーナの表情が明るくなる。



「よかった…」



　胸を撫で下ろし、明るく笑うイリーナにつられ、私も笑顔になる。




　しかし、次第にイリーナの顔が曇っていく。


　ごくっ、と生唾を飲む音が聞こえそうなほど、イリーナの白い喉が上下した。

　どうしたの？と私が問い掛ける前に、イリーナが恐る恐る口を開いた。



「ヒロイン、じゃあ……レノ先輩のことは…？」



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