「何だ、お前？」


　馴々しくヒロインの体に触りやがって。

　さらに無理矢理キスまでするとはいい度胸だ。

　男はヒロインの腰を抱き寄せたまま、果敢に俺を睨み付ける。


「俺の女を迎えに来ただけだぞ、と」


　本当は殴り殺してやりたいが、そこはぐっと堪えて言い放ってやった。



「レノ…」


　助けを求めるように、ヒロインがか細い声で俺を呼んだ。


　目が潤んでいる。


　俺のヒロインを泣かせるなんて、死刑に値するぞ。


　一発ぐらい殴ってやろうか。


　そんな物騒な考えも浮かんだが、何よりもまず、ヒロインを安心させるのが先だ。


　俺はヒロインに微笑んだ。


「ヒロイン、帰るぞ」


　ヒロインに手を差し出すと、震えながらも俺の手をとった。


　そのままヒロインを引き寄せ抱き寄せる。



「大丈夫か？」


　ヒロインは小さく頷いたが、その体は震えていた。



「おい、待てよ！」


　男が射殺すかのように俺を睨んだ。


「まだ何か用か？」


　俺はうんざりして男に振り返った。



「俺の女を返せ」



　男が言った一言で、完全に俺の堪忍袋の尾が切れた。


　ヒロインが制止するより早く、俺は男を殴っていた。

　ガシャン！という激しい音がし、店のあちこちから悲鳴が聞こえる。

　男はカウンターまで吹っ飛んで、完全に失神していた。



「お前ごときに、ヒロインはもったいないぞ、と」


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