「はぁ！？」


　ヒロインからの伝言は予想もしていなかったもので、俺は間抜けな声を出した。


　飲みに行くなんて、どういう風の吹き回しだ？

　普段俺が誘っても行かないくせに。


「ねぇ先輩…「あー、イリーナ悪かったな。今度奢るぞ、と」


　イリーナは何か言い掛けたが、それを遮った。
　言いたいことはわかってる。


　まったく、何考えてんだ？


　さっさと仕事終わらせて会いに行くか。




‐‐‐‐‐




「ヒロイン、いるか？」


　終業時間になり、残りの仕事は後輩達に押しつけ、ヒロインが働くオフィスに向かった。


「きゃ、レノさん！？」


　入口付近に座っていた女性社員の声で、一斉に俺に視線が集まる。

　女の多いオフィスだな。
　こっちを見ながらひそひそ話されて、居心地が悪い。


「なぁ、ヒロインはいないのか、と」

「あ、ヒロインならさっき出ましたよ」


　くそ、遅かった。

　俺は舌打ちして、そこをあとにした。



　今会社を出たら間に合うと思っていたが。

　運悪くツォンさんと鉢合わせした。


「レノ、どこに行くつもりだ？」

「えっ…と」

　怒気を孕んだツォンさんの言葉に、俺は口籠もった。


「…オフィスに戻れ」


　逃げる前に腕を掴まれ、あっさり連行されてしまった。



　ヒロインが気になるってのに。



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