旧拍手小説集
ヒロイン
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立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花 2
「ツォンさん、明日発注予定の備品リスト確認してもらえましたか?」
「あぁ、あれで問題ない。いつも助かるよ」
「いえいえ」
「ルードさん、手榴弾少なくなってますけど、発注掛けますか?今のペースだと、来週末の作戦分が不足する可能性があるかと」
「そうだな。2ケース追加してくれ」
「わかりました。通常5営業日ですが、早めに納品してもらえるようにお願いしておきますね」
「イリーナ!続き発売してたよ!私、読んだからよかったら読む?」
「ありがとー!続き気になってたの!お礼に今日ランチ奢る!」
「やった、ありがとう!そういえば、カフェテリアに新しいドリンク増えてたよ」
「レノ!あんた電磁機雷、無断で持ち出したでしょ!?システム上と実際の数が合わないんだけど。前に言ったよね?事後でもいいから持ち出し数ちゃんと入れろって。本当に脳みそ詰まってんの?」
ソファに横になっていい気分でうたた寝していたというのに。頭上から降ってきたのは不機嫌そうなヒロインの声。目を開けると、ヒロインが苛立たしげに顔をしかめてオレを真上から覗き込んでいた。そんな顔じゃなければ、幸せな目覚めになっただろうに、何だか損した気分だ。
「お前さ、オレにだけ当たり強くねえか?」
「自業自得。あんたがちゃんとしないから、私が毎回イライラする羽目になってんの!わかったらさっさとリスト更新しろ、バカ!…っと、レノにはこっちの方が効くんだった」
そう言ってヒロインは屈託のない笑顔を浮かべながらタブレットを無理矢理オレに押し付けて、自席に戻っていった。
確かに、その顔には弱い。
反論も不満も言うことができないまま、オレは溜息をついてタブレットの画面を見た。
ヒロインはタークスの雑務を一手にこなしている。経費チェックに備品・武器の在庫管理に発注、整理整頓、その他諸々。ツォンさんもルードもヒロインの仕事ぶりを評価している。イリーナも初の女性の同僚ということもあってか、ヒロインと仲良くしている。本人曰く、『ヒロインのボディガード』らしい。ヒロインに近寄ってくる愚かな男が減ったと自慢していた。
当のヒロインもタークスにすっかり馴染んでいる。初めは怪我をしたり、返り血を浴びて帰ってくるオレたちを見て青い顔をしていたが、今ではもう慣れたもの。硝煙と血の臭いで頭が痛くなるからさっさとシャワーを浴びてこい、と言うぐらいに日常の一部と化している。
そしてオレは、というと――今まで全員で分担していた雑務を引き受けてくれていることには感謝をしている。しかし、そのせいで1日に1回はヒロインの小言を聞く羽目になっているのは悩みのタネだ。
「何個使ったっけな…」
ヒロインに渡されたタブレットを眺めながら、ここ数日間の任務を思い返してみる。そういえば3日前、反神羅組織のアジトを潰しに行って、そのときにいくつか使った気がする。
「なぁ、足りないのって2つか?」
「わかってるなら、さっさと更新して!」
「へいへい…」
データを入力して送信。終わったことを告げると、ヒロインはまるで流れ作業の一部であるかのようにそっけなく「ありがとう」と言った。
やっぱりオレだけ扱いが雑だ。
それが面白くなくて再びソファに横になって目を瞑った。
「はい、これご褒美」
浅い眠りに入ろうとしたところだったが、随分と機嫌がよさそうなヒロインの声が聞こえてきたので、オレはゆっくりと目を開けた。
そこには、穏やかな顔で覗き込むヒロインがいた。差し出されたヒロインの手にはチョコレートの箱がある。オレが唯一食べられる苦味の強いチョコレートだった。
「さっきカフェテリアで見かけたから。頑張ったレノにご褒美。ほら、あーん」
ヒロインの細い指に一粒のチョコレート。それが口元に迫ってきて、唇に触れる寸前、なぜか無性に気恥ずかしくなって、オレはらしくもなく顔を背けた。
「チョコぐらい、自分で食えるぞ、と」
「あら、赤くなっちゃって。じゃ、これあげる」
ヒロインはにこりと微笑むと、オレにチョコレートの箱を押し付けて自席に戻っていった。
普段は好き勝手暴言吐いてきつい態度を取るくせに、たまにこうやって優しさを見せてくるのがまたたちが悪い。美人であるからなおさらその振れ幅も大きく、右に左に振り回されてしまう。
怒っていても優しくても魅力的なことに変わりはないが、もう少し優しい時間が多いと嬉しいぞ、と。
To be continued...?
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「ツォンさん、明日発注予定の備品リスト確認してもらえましたか?」
「あぁ、あれで問題ない。いつも助かるよ」
「いえいえ」
「ルードさん、手榴弾少なくなってますけど、発注掛けますか?今のペースだと、来週末の作戦分が不足する可能性があるかと」
「そうだな。2ケース追加してくれ」
「わかりました。通常5営業日ですが、早めに納品してもらえるようにお願いしておきますね」
「イリーナ!続き発売してたよ!私、読んだからよかったら読む?」
「ありがとー!続き気になってたの!お礼に今日ランチ奢る!」
「やった、ありがとう!そういえば、カフェテリアに新しいドリンク増えてたよ」
「レノ!あんた電磁機雷、無断で持ち出したでしょ!?システム上と実際の数が合わないんだけど。前に言ったよね?事後でもいいから持ち出し数ちゃんと入れろって。本当に脳みそ詰まってんの?」
ソファに横になっていい気分でうたた寝していたというのに。頭上から降ってきたのは不機嫌そうなヒロインの声。目を開けると、ヒロインが苛立たしげに顔をしかめてオレを真上から覗き込んでいた。そんな顔じゃなければ、幸せな目覚めになっただろうに、何だか損した気分だ。
「お前さ、オレにだけ当たり強くねえか?」
「自業自得。あんたがちゃんとしないから、私が毎回イライラする羽目になってんの!わかったらさっさとリスト更新しろ、バカ!…っと、レノにはこっちの方が効くんだった」
そう言ってヒロインは屈託のない笑顔を浮かべながらタブレットを無理矢理オレに押し付けて、自席に戻っていった。
確かに、その顔には弱い。
反論も不満も言うことができないまま、オレは溜息をついてタブレットの画面を見た。
ヒロインはタークスの雑務を一手にこなしている。経費チェックに備品・武器の在庫管理に発注、整理整頓、その他諸々。ツォンさんもルードもヒロインの仕事ぶりを評価している。イリーナも初の女性の同僚ということもあってか、ヒロインと仲良くしている。本人曰く、『ヒロインのボディガード』らしい。ヒロインに近寄ってくる愚かな男が減ったと自慢していた。
当のヒロインもタークスにすっかり馴染んでいる。初めは怪我をしたり、返り血を浴びて帰ってくるオレたちを見て青い顔をしていたが、今ではもう慣れたもの。硝煙と血の臭いで頭が痛くなるからさっさとシャワーを浴びてこい、と言うぐらいに日常の一部と化している。
そしてオレは、というと――今まで全員で分担していた雑務を引き受けてくれていることには感謝をしている。しかし、そのせいで1日に1回はヒロインの小言を聞く羽目になっているのは悩みのタネだ。
「何個使ったっけな…」
ヒロインに渡されたタブレットを眺めながら、ここ数日間の任務を思い返してみる。そういえば3日前、反神羅組織のアジトを潰しに行って、そのときにいくつか使った気がする。
「なぁ、足りないのって2つか?」
「わかってるなら、さっさと更新して!」
「へいへい…」
データを入力して送信。終わったことを告げると、ヒロインはまるで流れ作業の一部であるかのようにそっけなく「ありがとう」と言った。
やっぱりオレだけ扱いが雑だ。
それが面白くなくて再びソファに横になって目を瞑った。
「はい、これご褒美」
浅い眠りに入ろうとしたところだったが、随分と機嫌がよさそうなヒロインの声が聞こえてきたので、オレはゆっくりと目を開けた。
そこには、穏やかな顔で覗き込むヒロインがいた。差し出されたヒロインの手にはチョコレートの箱がある。オレが唯一食べられる苦味の強いチョコレートだった。
「さっきカフェテリアで見かけたから。頑張ったレノにご褒美。ほら、あーん」
ヒロインの細い指に一粒のチョコレート。それが口元に迫ってきて、唇に触れる寸前、なぜか無性に気恥ずかしくなって、オレはらしくもなく顔を背けた。
「チョコぐらい、自分で食えるぞ、と」
「あら、赤くなっちゃって。じゃ、これあげる」
ヒロインはにこりと微笑むと、オレにチョコレートの箱を押し付けて自席に戻っていった。
普段は好き勝手暴言吐いてきつい態度を取るくせに、たまにこうやって優しさを見せてくるのがまたたちが悪い。美人であるからなおさらその振れ幅も大きく、右に左に振り回されてしまう。
怒っていても優しくても魅力的なことに変わりはないが、もう少し優しい時間が多いと嬉しいぞ、と。
To be continued...?
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