悩める彼女に愛の手を 5
ヒロイン
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電話で言っていたルーファウスの『頼み』は、よりセキュリティの高いマンションへの引っ越しだった。今のマンションはオートロックでもなく、ドアモニターもない。そのおかげで広さの割に賃料は安く、ヒロインとしては大助かりだった。今まではルーファウスから引っ越ししろと言われてものらりくらりと躱していたが、さすがに誘拐が起きてしまった以上、拒否することはできなかった。もちろん、多少は抵抗の意志を見せた。が、今回起きたことや廃工場での立ち回りについて滔々と正論を言われては、即時降伏もやむなしだった。
引っ越しはすぐに終わった。ルーファウスは既に業者を手配しており、ヒロインが家に帰ると作業員たちが待ち構えていた。家具の運び出しから梱包まで作業員が全て行い、ヒロインはいるものといらないものを指示するだけでよかった。引越し先への搬入もすぐに終わり、気づけば片付いた新居で一人立ち尽くしていた。
「…寝よう」
目まぐるしい一日だった。最早考えたり、何かをする気力すらなく、ヒロインはそのままベッドに倒れ込んだ。
朝――とヒロインは思っていたが実際には昼を過ぎた頃、インターホンが鳴った。目をこすりながらベッドから下りたヒロインは、音のする方にゆっくりと歩いていった。そういえば引っ越ししたんだった、お腹へった、等々、どうでもいいことばかり考えながらインターホンに出た。
「はーい」
まだ半分眠った状態でだらしない返事をしたヒロインは、新居の新機能であるドアモニターに映る人物を見て一気に目を覚ました。
「れ、レノさん!?」
『様子、見に来たぞ、と』
ヒロインの頭がフル回転し始めた。風呂に入っていない、顔も洗っていない状態でレノを家に招くのか?しかし、風呂から上がるまで外で待たせるのは失礼ではないか?どうしよう、どうしよう、どうしよう――
『おーい、大丈夫か?』
「あ、あの!今開けますけど、お風呂入ってなくて…だから、ちょっと時間ください!!」
ヒロインはオートロックを解錠し、部屋の鍵を開けると、そのまま風呂に飛び込んだ。遠くでレノが「お邪魔します」と言ったのが聞こえた気がした。
なんとか人前に出られるレベルで身支度を整えたヒロインは、リビングに入って早々、レノに頭を下げた。
「すみません、お待たせして――あれ?私、そういえばレノさんに新居のこと…」
「あぁ、聞いてないぞ、と」
ヒロインは思わず頭を抱えた。またしても失態を重ねてしまい項垂れたところで、レノの手が顎に触れた。
「ま、昨日は大変だったからな。引っ越しおめでとう、ヒロイン」
レノの唇が重ねられる。軽く触れるだけのキスだったはずが、次第に熱を帯びてくる。舌を絡めているうちに身体が熱くなり、ヒロインはレノの腰に腕を回した。
一度ついた火がようやく収まり、二人はベッドで微睡んでいた。情事の後、こうやって二人で触れ合っているのも心地よく、ヒロインのまぶたが次第に重くなっていく。
「そういえば、今日はどうしてうちに?」
「あ、やっべ。忘れてた」
ヒロインはレノの様子を怪訝に思いながらも、睡魔には勝てず眠りに落ちる寸前になっていた。
「料理、教えに来たぞ、と」
「はああああ!?え、何で!?」
予想だにしなかったレノの言葉に、ヒロインは大声を上げて飛び起きた。睡魔なんぞどこかに飛んでいってしまっていた。
「何で、料理のこと…だって、私…あ!」
犯人は一人しかいない。意地の悪い顔をしているルーファウスがすぐに脳裏に浮かんだ。
「…兄は、何て?」
「んー、ヒロインが料理の先生を探してるから、料理できるなら教えてやってくれって」
レノにだけは料理ができないことを知られたくなかったのに、どうして余計なことをするのか!ルーファウスには怒りを感じたが、それ以上にレノに知られてしまったことが恥ずかしく、ヒロインは再び布団に潜り込んだ。
「料理、苦手なのはわかってたぞ、と」
ヒロインは大きく目を開いた。
「何で…」
「あのとき、すげぇ目泳がせてたからなぁ」
ますます恥ずかしい。もうレノのことをまともに見れそうにない。しかし、レノはお構いなしだ。布団を捲られ、顔が顕になると、レノは真っ直ぐヒロインの目を見てきた。恥ずかしくて目を逸らしても、レノは追いかけてくる。
「いじわる」
「あぁ、ヒロインにはちょっと意地悪な方がいいと思って」
そうやって屈託ない笑顔を向けられると、ますます恥ずかしくなる。ヒロインはまともにレノの目を見ることができず、レノの胸に顔を押し付けた。
「こうやってベッドで過ごすのも悪くねぇけど、社長からの依頼もこなさないとな。ほら、一緒に料理作ろうぜ」
レノに引っ張り起こされたヒロインは、少し頬を膨らませた。サラリーマンらしく上司の命に従おうとするレノに1割、レノに料理ができないことをバラしたルーファウスに8割。あとの1割は情けない自分に対しての怒り。
「…途中でやめるのはなしだからね。できるようになるまで、私、頑張るから」
「あぁ、どんだけでも付き合ってやるぞ、と」
この後、思った以上に不器用なヒロインにレノは少しだけ頭を悩ませるのだった。
END?
2022/10/10
.
引っ越しはすぐに終わった。ルーファウスは既に業者を手配しており、ヒロインが家に帰ると作業員たちが待ち構えていた。家具の運び出しから梱包まで作業員が全て行い、ヒロインはいるものといらないものを指示するだけでよかった。引越し先への搬入もすぐに終わり、気づけば片付いた新居で一人立ち尽くしていた。
「…寝よう」
目まぐるしい一日だった。最早考えたり、何かをする気力すらなく、ヒロインはそのままベッドに倒れ込んだ。
朝――とヒロインは思っていたが実際には昼を過ぎた頃、インターホンが鳴った。目をこすりながらベッドから下りたヒロインは、音のする方にゆっくりと歩いていった。そういえば引っ越ししたんだった、お腹へった、等々、どうでもいいことばかり考えながらインターホンに出た。
「はーい」
まだ半分眠った状態でだらしない返事をしたヒロインは、新居の新機能であるドアモニターに映る人物を見て一気に目を覚ました。
「れ、レノさん!?」
『様子、見に来たぞ、と』
ヒロインの頭がフル回転し始めた。風呂に入っていない、顔も洗っていない状態でレノを家に招くのか?しかし、風呂から上がるまで外で待たせるのは失礼ではないか?どうしよう、どうしよう、どうしよう――
『おーい、大丈夫か?』
「あ、あの!今開けますけど、お風呂入ってなくて…だから、ちょっと時間ください!!」
ヒロインはオートロックを解錠し、部屋の鍵を開けると、そのまま風呂に飛び込んだ。遠くでレノが「お邪魔します」と言ったのが聞こえた気がした。
なんとか人前に出られるレベルで身支度を整えたヒロインは、リビングに入って早々、レノに頭を下げた。
「すみません、お待たせして――あれ?私、そういえばレノさんに新居のこと…」
「あぁ、聞いてないぞ、と」
ヒロインは思わず頭を抱えた。またしても失態を重ねてしまい項垂れたところで、レノの手が顎に触れた。
「ま、昨日は大変だったからな。引っ越しおめでとう、ヒロイン」
レノの唇が重ねられる。軽く触れるだけのキスだったはずが、次第に熱を帯びてくる。舌を絡めているうちに身体が熱くなり、ヒロインはレノの腰に腕を回した。
一度ついた火がようやく収まり、二人はベッドで微睡んでいた。情事の後、こうやって二人で触れ合っているのも心地よく、ヒロインのまぶたが次第に重くなっていく。
「そういえば、今日はどうしてうちに?」
「あ、やっべ。忘れてた」
ヒロインはレノの様子を怪訝に思いながらも、睡魔には勝てず眠りに落ちる寸前になっていた。
「料理、教えに来たぞ、と」
「はああああ!?え、何で!?」
予想だにしなかったレノの言葉に、ヒロインは大声を上げて飛び起きた。睡魔なんぞどこかに飛んでいってしまっていた。
「何で、料理のこと…だって、私…あ!」
犯人は一人しかいない。意地の悪い顔をしているルーファウスがすぐに脳裏に浮かんだ。
「…兄は、何て?」
「んー、ヒロインが料理の先生を探してるから、料理できるなら教えてやってくれって」
レノにだけは料理ができないことを知られたくなかったのに、どうして余計なことをするのか!ルーファウスには怒りを感じたが、それ以上にレノに知られてしまったことが恥ずかしく、ヒロインは再び布団に潜り込んだ。
「料理、苦手なのはわかってたぞ、と」
ヒロインは大きく目を開いた。
「何で…」
「あのとき、すげぇ目泳がせてたからなぁ」
ますます恥ずかしい。もうレノのことをまともに見れそうにない。しかし、レノはお構いなしだ。布団を捲られ、顔が顕になると、レノは真っ直ぐヒロインの目を見てきた。恥ずかしくて目を逸らしても、レノは追いかけてくる。
「いじわる」
「あぁ、ヒロインにはちょっと意地悪な方がいいと思って」
そうやって屈託ない笑顔を向けられると、ますます恥ずかしくなる。ヒロインはまともにレノの目を見ることができず、レノの胸に顔を押し付けた。
「こうやってベッドで過ごすのも悪くねぇけど、社長からの依頼もこなさないとな。ほら、一緒に料理作ろうぜ」
レノに引っ張り起こされたヒロインは、少し頬を膨らませた。サラリーマンらしく上司の命に従おうとするレノに1割、レノに料理ができないことをバラしたルーファウスに8割。あとの1割は情けない自分に対しての怒り。
「…途中でやめるのはなしだからね。できるようになるまで、私、頑張るから」
「あぁ、どんだけでも付き合ってやるぞ、と」
この後、思った以上に不器用なヒロインにレノは少しだけ頭を悩ませるのだった。
END?
2022/10/10
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