悩める彼女に愛の手を 5
ヒロイン
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レノとルードは指定の時間前に犯人のアジトと思われる廃工場に着いた。ヒロインが人質になっているため、敵に見つからないようにこっそりと侵入する予定だったが、予想に反して廃工場は騒がしかった。物陰から様子を伺うと、男たちが数人殺気立って走り回っているのが見えた。どうもおかしい。
「なーんか、嫌な予感がするぞ、と」
レノは初めてヒロインに会った日のことを思い出していた。彼女は迷うことなく男にハイキックを見舞った。あのときは大した度胸だと感心したものだが、もし今日同じことをしているのだとしたらと考え、レノは肝が冷えた。
そして、その嫌な予感は見事的中した。
物陰から現れたヒロインが一斗缶を振り上げ、油断していた男の後頭部に叩きつけたのだ。
「まじかよ」
ゴン!という鈍い音が辺りに響いた。幸い男は一撃で倒れたが、そのときの音が他の敵を呼び寄せてしまったようだ。ヒロインは一斗缶を放ると、慌てて足音と逆の方に逃げていった。
「なんというか…すさまじいな、彼女は」
ルードは少し呆れた様子だった。レノはヒロインのお転婆さをある程度は理解しているつもりだったが、とても誘拐された女性とは思えないヒロインの立ち回りを見ていると、呆れを通り越してむしろ感心した。ただ、この一連の出来事をルーファウスに報告したら、ヒロインには大きな雷が落ちることだろう。
「これ以上大立ち回りをする前に、お転婆娘を保護するか…」
レノとルードは敵に見つからないように注意しながら、ヒロインを追いかけた。
ヒロインが数人の男を戦闘不能にしてくれたおかげで、レノとルードの仕事は楽に片付いた。拘束され、連行される犯人たちを見て満足そうにヒロインは頷いていた。
「まったく…今度、誰かぶん殴るときは任せろって言っただろ」
レノはヒロインの手を取った。人を殴りなれていない華奢な手は赤くなっていた。それを回復マテリアで治してやると、ヒロインが小さな声で礼を言った。
「来てくれるって思ってたけど、ちょっと事故があって――」
ヒロインの言う事故とは、マットレスの上に股間を押さえて気絶していた男のことだろう。一撃で仕留めたおかげで逆上した男に傷つけられなかったのは運が良かったとしか言いようがない。
「何もなくてよかった…心配したぞ、と」
レノはヒロインを抱き寄せると、きつく抱きしめた。ヒロインの顔が一瞬で真っ赤になったのが見えた。犯人相手には物怖じせずに立ち向かっていたくせに、こういうところはまだまだなようだ。そういうところも可愛らしく、甘やかしたくなるのだが、レノは今から非情なことを伝えなければならなかった。
「社長が『今すぐ戻ってこい。話がある』ってよ」
さっきまでの紅潮が嘘のように、ヒロインの顔は絶望で青ざめていた。
「…絶対怒られる」
あのパーティーのときと同じ展開にレノは思わず苦笑いをし、ヒロインを慰めるように頭をなでた。
屋敷にヒロインを送り届けると、ヒロインはツォンによって書斎に連行された。それから10分ほどして、書斎の扉が開いた。暗い顔をして出てきたと思ったら、「引っ越しすることになった」とぽつりと言って、ヒロインはそのまま俯き加減で屋敷を出ていった。
「引っ越しって…」
ミッドガルから出ていくのだろうか?追いかけて詳細を聞こうとしたところで、ルーファウスが書斎から出てきてレノを呼び止めた。
「さて、レノ。いろいろと聞きたいことがある」
静かながらも有無を言わせない圧力を感じ、レノは思わず背筋を伸ばした。一応こう見えてレノもサラリーマンである。逆らうことなどできようはずもなく、レノは恐る恐る書斎に入った。
何を聞かれるのかと身構えていると、ルーファウスが笑った。
「ヒロインとのことを咎めるつもりはない。身体の関係があろうがなかろうが、ヒロインももう大人だからな。自分で責任を取るだろう」
さすがのレノも上司からヒロインとの肉体関係を言及されると決まりが悪く、思わず頭を掻いた。
「――ヒロインとは本気なのか?」
「それは、もちろん」
レノは端的に答えた。どれだけヒロインを大切に思っているか、言葉を尽くして語るのは簡単だ。二人の子供の時の思い出を語れば、ルーファウスを納得させることはできるだろう。しかし、その思い出を言葉にしてしまうと安っぽくなってしまいそうで、レノにはできなかった。
「ではその言葉を信じよう」
お咎めなしになり、レノはほっと胸を撫で下ろした。が、それだけで解放されると思ったのは楽観的すぎたようだった。ルーファウスが意地の悪い笑みを浮かべた。
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「なーんか、嫌な予感がするぞ、と」
レノは初めてヒロインに会った日のことを思い出していた。彼女は迷うことなく男にハイキックを見舞った。あのときは大した度胸だと感心したものだが、もし今日同じことをしているのだとしたらと考え、レノは肝が冷えた。
そして、その嫌な予感は見事的中した。
物陰から現れたヒロインが一斗缶を振り上げ、油断していた男の後頭部に叩きつけたのだ。
「まじかよ」
ゴン!という鈍い音が辺りに響いた。幸い男は一撃で倒れたが、そのときの音が他の敵を呼び寄せてしまったようだ。ヒロインは一斗缶を放ると、慌てて足音と逆の方に逃げていった。
「なんというか…すさまじいな、彼女は」
ルードは少し呆れた様子だった。レノはヒロインのお転婆さをある程度は理解しているつもりだったが、とても誘拐された女性とは思えないヒロインの立ち回りを見ていると、呆れを通り越してむしろ感心した。ただ、この一連の出来事をルーファウスに報告したら、ヒロインには大きな雷が落ちることだろう。
「これ以上大立ち回りをする前に、お転婆娘を保護するか…」
レノとルードは敵に見つからないように注意しながら、ヒロインを追いかけた。
ヒロインが数人の男を戦闘不能にしてくれたおかげで、レノとルードの仕事は楽に片付いた。拘束され、連行される犯人たちを見て満足そうにヒロインは頷いていた。
「まったく…今度、誰かぶん殴るときは任せろって言っただろ」
レノはヒロインの手を取った。人を殴りなれていない華奢な手は赤くなっていた。それを回復マテリアで治してやると、ヒロインが小さな声で礼を言った。
「来てくれるって思ってたけど、ちょっと事故があって――」
ヒロインの言う事故とは、マットレスの上に股間を押さえて気絶していた男のことだろう。一撃で仕留めたおかげで逆上した男に傷つけられなかったのは運が良かったとしか言いようがない。
「何もなくてよかった…心配したぞ、と」
レノはヒロインを抱き寄せると、きつく抱きしめた。ヒロインの顔が一瞬で真っ赤になったのが見えた。犯人相手には物怖じせずに立ち向かっていたくせに、こういうところはまだまだなようだ。そういうところも可愛らしく、甘やかしたくなるのだが、レノは今から非情なことを伝えなければならなかった。
「社長が『今すぐ戻ってこい。話がある』ってよ」
さっきまでの紅潮が嘘のように、ヒロインの顔は絶望で青ざめていた。
「…絶対怒られる」
あのパーティーのときと同じ展開にレノは思わず苦笑いをし、ヒロインを慰めるように頭をなでた。
屋敷にヒロインを送り届けると、ヒロインはツォンによって書斎に連行された。それから10分ほどして、書斎の扉が開いた。暗い顔をして出てきたと思ったら、「引っ越しすることになった」とぽつりと言って、ヒロインはそのまま俯き加減で屋敷を出ていった。
「引っ越しって…」
ミッドガルから出ていくのだろうか?追いかけて詳細を聞こうとしたところで、ルーファウスが書斎から出てきてレノを呼び止めた。
「さて、レノ。いろいろと聞きたいことがある」
静かながらも有無を言わせない圧力を感じ、レノは思わず背筋を伸ばした。一応こう見えてレノもサラリーマンである。逆らうことなどできようはずもなく、レノは恐る恐る書斎に入った。
何を聞かれるのかと身構えていると、ルーファウスが笑った。
「ヒロインとのことを咎めるつもりはない。身体の関係があろうがなかろうが、ヒロインももう大人だからな。自分で責任を取るだろう」
さすがのレノも上司からヒロインとの肉体関係を言及されると決まりが悪く、思わず頭を掻いた。
「――ヒロインとは本気なのか?」
「それは、もちろん」
レノは端的に答えた。どれだけヒロインを大切に思っているか、言葉を尽くして語るのは簡単だ。二人の子供の時の思い出を語れば、ルーファウスを納得させることはできるだろう。しかし、その思い出を言葉にしてしまうと安っぽくなってしまいそうで、レノにはできなかった。
「ではその言葉を信じよう」
お咎めなしになり、レノはほっと胸を撫で下ろした。が、それだけで解放されると思ったのは楽観的すぎたようだった。ルーファウスが意地の悪い笑みを浮かべた。
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