悩める彼女に愛の手を 5
ヒロイン
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電話を切ったルーファウスは口元に微かに笑みを浮かべた。相変わらず腹違いの妹のヒロインは可愛らしい悩みを抱えているようだ。
昔からヒロインは器用とは言い難かった。一緒に住んでいた頃は屋敷の使用人だった母親の手伝いをすることもあったが、大体が二度手間になってしまうため、終いには手伝いを禁じられるほど要領が悪かった。そんなところも可愛らしく、ルーファウスは手のかかるヒロインの面倒を見ていたのだが、今もそれは変わっていない。再会してからヒロインには勉強やマナーを教えたが、やはり覚えは悪かった。唯一覚えがよかったのは護身術だ。以前、男をハイキックで気絶させたように、経験こそないがスキルだけは一人前だ。きっと料理もなかなか覚えられないだろうが、できるまで諦めることはないだろう。諦めの悪さは彼女の長所だった。
使用人にヒロインの迎えを頼み、さて料理の講師は誰にするかと考えを巡らせていると、携帯が着信を告げた。迎えを頼んだ使用人の女性からだった。
『ルーファウス様、ヒロインさんが誘拐されたようです』
誘拐?
ルーファウスにしてはらしくなく、言葉の意味を頭が理解するまで数秒を要した。そして次に様々な疑問が頭を巡る。誰が、何故――頭が動き出し、ようやくいつもの調子を取り戻したルーファウスは、混沌とする思考を整理しながら指示を出した。
「目撃者を探して、犯人の情報を集めてくれ。監視カメラの映像はタークスに――」
この状況ならタークスを動かすしかないのだが、ルーファウスには一つ気がかりなことがあった。レノのことだ。二人がどれぐらい真剣なのかはまだヒロイン本人から聞いていない。遊びなら――それはそれで別の機会にレノに灸をすえることになるが、冷静に仕事はできるだろう。しかし、本気だったなら?プロと言えど、少なからず動揺はするだろう。それがヒロイン救出に影響しないことを願いつつ、ルーファウスはツォンに電話をかけた。
30分も経たないうちにタークスのメンバーは全員、ルーファウスの屋敷に集まった。ルードとイリーナはルーファウスとヒロインの関係を知らなかったようだが、ここに来るまでにツォンから説明があったようだ。ただ、レノとヒロインの関係については、当人とルーファウス以外は知らないようだった。レノはいつものように飄々とした様子を装いつつも、忙しなく小刻みに指で組んだ腕を叩いていることからも、内心動揺しているのが見て取れた。
「状況は?」
ツォンに問うと、ツォンがタブレットを差し出してきた。そこには、動画が表示されていた。ルーファウスは無言で再生ボタンを押した。
そこには目隠しと猿轡をされ、粗末なパイプ椅子に拘束されているヒロインが映っていた。胸が上下していることから死んではいないようだが、微動だにしないところを見ると、意識を失っているようだった。
『あんたの彼女は預かったぜ!無事に返してほしけりゃ、仲間の解放と金を用意しろ!』
等々、ヒロインと一緒に映っていた覆面姿の男が長々と要求を言っていたが、ルーファウスはそれを聞き流した。何か監禁場所の手がかりはないかと目を凝らしていると、突然男がヒロインの服をナイフで裂いた。ヒロインの下着が顕になり、さらに胸元に縦の赤い筋が走ったところで、ルーファウスは顔をしかめた。
『猶予は1時間だ。1秒でも過ぎたら、お前の女を裸にひん剥いて、俺たちで輪姦してやるからな』
男の下品な捨て台詞で動画は終わった。
「この動画はどこに?」
「動画サイトに上がっていました。既に削除済みです。アクセスした人物の洗い出しは情報部が行っています」
「そうか、徹底的に頼むぞ。撮影場所の特定は?」
「それも終わっています。動画をアップロードした際の位置情報から特定済みです。場所はスラムの端にある廃工場で、レノとルードで強襲して、ヒロインを奪還します」
ルーファウスはちらりとレノを見た。先程よりは落ち着いているように見えるが、大丈夫だろうか?
そんなルーファウスの心を読んだように、レノが不敵に笑った。
「必ず無事に連れて帰りますよ、と」
レノがそう言うならば、必ずやり遂げるだろう。ルーファウスはふっと笑った。
「頼んだぞ」
「了解、と」
.
昔からヒロインは器用とは言い難かった。一緒に住んでいた頃は屋敷の使用人だった母親の手伝いをすることもあったが、大体が二度手間になってしまうため、終いには手伝いを禁じられるほど要領が悪かった。そんなところも可愛らしく、ルーファウスは手のかかるヒロインの面倒を見ていたのだが、今もそれは変わっていない。再会してからヒロインには勉強やマナーを教えたが、やはり覚えは悪かった。唯一覚えがよかったのは護身術だ。以前、男をハイキックで気絶させたように、経験こそないがスキルだけは一人前だ。きっと料理もなかなか覚えられないだろうが、できるまで諦めることはないだろう。諦めの悪さは彼女の長所だった。
使用人にヒロインの迎えを頼み、さて料理の講師は誰にするかと考えを巡らせていると、携帯が着信を告げた。迎えを頼んだ使用人の女性からだった。
『ルーファウス様、ヒロインさんが誘拐されたようです』
誘拐?
ルーファウスにしてはらしくなく、言葉の意味を頭が理解するまで数秒を要した。そして次に様々な疑問が頭を巡る。誰が、何故――頭が動き出し、ようやくいつもの調子を取り戻したルーファウスは、混沌とする思考を整理しながら指示を出した。
「目撃者を探して、犯人の情報を集めてくれ。監視カメラの映像はタークスに――」
この状況ならタークスを動かすしかないのだが、ルーファウスには一つ気がかりなことがあった。レノのことだ。二人がどれぐらい真剣なのかはまだヒロイン本人から聞いていない。遊びなら――それはそれで別の機会にレノに灸をすえることになるが、冷静に仕事はできるだろう。しかし、本気だったなら?プロと言えど、少なからず動揺はするだろう。それがヒロイン救出に影響しないことを願いつつ、ルーファウスはツォンに電話をかけた。
30分も経たないうちにタークスのメンバーは全員、ルーファウスの屋敷に集まった。ルードとイリーナはルーファウスとヒロインの関係を知らなかったようだが、ここに来るまでにツォンから説明があったようだ。ただ、レノとヒロインの関係については、当人とルーファウス以外は知らないようだった。レノはいつものように飄々とした様子を装いつつも、忙しなく小刻みに指で組んだ腕を叩いていることからも、内心動揺しているのが見て取れた。
「状況は?」
ツォンに問うと、ツォンがタブレットを差し出してきた。そこには、動画が表示されていた。ルーファウスは無言で再生ボタンを押した。
そこには目隠しと猿轡をされ、粗末なパイプ椅子に拘束されているヒロインが映っていた。胸が上下していることから死んではいないようだが、微動だにしないところを見ると、意識を失っているようだった。
『あんたの彼女は預かったぜ!無事に返してほしけりゃ、仲間の解放と金を用意しろ!』
等々、ヒロインと一緒に映っていた覆面姿の男が長々と要求を言っていたが、ルーファウスはそれを聞き流した。何か監禁場所の手がかりはないかと目を凝らしていると、突然男がヒロインの服をナイフで裂いた。ヒロインの下着が顕になり、さらに胸元に縦の赤い筋が走ったところで、ルーファウスは顔をしかめた。
『猶予は1時間だ。1秒でも過ぎたら、お前の女を裸にひん剥いて、俺たちで輪姦してやるからな』
男の下品な捨て台詞で動画は終わった。
「この動画はどこに?」
「動画サイトに上がっていました。既に削除済みです。アクセスした人物の洗い出しは情報部が行っています」
「そうか、徹底的に頼むぞ。撮影場所の特定は?」
「それも終わっています。動画をアップロードした際の位置情報から特定済みです。場所はスラムの端にある廃工場で、レノとルードで強襲して、ヒロインを奪還します」
ルーファウスはちらりとレノを見た。先程よりは落ち着いているように見えるが、大丈夫だろうか?
そんなルーファウスの心を読んだように、レノが不敵に笑った。
「必ず無事に連れて帰りますよ、と」
レノがそう言うならば、必ずやり遂げるだろう。ルーファウスはふっと笑った。
「頼んだぞ」
「了解、と」
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