悩める彼女に愛の手を 4
ヒロイン
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「覚えてるか?あの日のこと」
こんな偶然があるだろうか。会いたいと思っていた人が命の恩人だったなんて。そして、今こうやって二人で、手を伸ばせば届く距離にいる。
「本当に、あの子が、レノさん…?」
「あぁ」
嬉しそうにレノが笑った。そして、その手が伸ばされ、そっと頬に触れた。気づかないうちに涙が溢れていたらしい。それをレノが優しく拭ってくれた。
「また会えたなんて、運命だよな」
運命。その言葉に突き動かされるように、ヒロインは大胆にもレノに抱きついた。レノの少し早い鼓動が伝わってくる。
「どうして、すぐに教えてくれなかったんですか?」
「気づいたのが最近だからだぞ、と」
レノは先日一緒にご飯を食べに行ったあとのことを教えてくれた。あのときの失敗を改めて聞かされ、頭を掻きむしって叫び出したい衝動に駆られたが、今度はぐっとそれを抑えた。その代わり、自分の顔が更に赤くなったのがわかった。抱きついているお陰で、その顔を見られないことだけが幸いだった。
「って…やだ、ご、ごめんなさい!急に、私…」
我に返って自分の大胆な行動が恥ずかしくなり、ヒロインはレノから離れようと身体を起こした。が、今度はレノに抱きしめられ、そのまま二人でベッドの上に転がり、横向きで見つめ合った。
「ずっと、また会いたいって思ってた」
レノの手が頬を滑る。レノに触れられるのは全く嫌ではなかった。
「私も、また会ってちゃんとお礼、言いたいって思ってた。ありがとう、レノさん」
もっと触れてほしい、近くにいてほしい。男性に対してそう思ったのは初めてのことだった。それを伝えようと、ヒロインは自然に自分の手を同じようにレノの頬に伸ばし、そっと触れた。一瞬、レノが戸惑ったのがわかった。
「いいのか?」
「うん」
二人の唇が触れ合った。今度は振りではなく、しっかりと思いを確かめ合うように。レノとのキスは頭の芯まで痺れるような気持ちよさで、それはレノも同じだったのか、次第にキスだけでは物足りなくなってくる。
どちらからともなく、互いの服に手をかけた。
レノの手が身体を滑る。その手は温かく、心を穏やかにさせた。抱き合っているだけで心は満たされたが、次第に身体の奥が疼いていく。今まで自分から男性を求めたことなどなかったが、今はレノが欲しくて欲しくてたまらなかった。
「レノさん、お願い…挿れて?」
気持ち悪いとさえ思っていた愛撫も、痛くて苦痛なだけだった行為の記憶も、レノとの交わりで上書きされていく。向かい合って繋がっているだけで、自然と嬌声が漏れる。電流が身体に走ったような初めての感覚とその余韻に浸りながら、ヒロインはもう一度レノと長い長いキスを交わした。
どこかで聞き慣れた電子音が鳴っていた。
「うる…っさい…」
ヒロインは音の鳴っている方に手を伸ばし、手を振り下ろした。すると、再び部屋に静寂が戻る――はずだった。
「やべっ」
隣で誰かが動き、ぬくもりが遠ざかっていく。寂しいとぼんやり思いながらも、ヒロインの意識は再び眠りに落ちようとしていた。
「ヒロイン、仕事行かなくていいのか?」
「へ?」
マヌケな声を出して目を開けると、そこには既に身支度を整えたレノが立っていた。
「遅刻!!」
がばっと飛び起きたヒロインは、自分が一糸まとわぬ姿であることにようやく気づいた。そして、レノを見上げて昨晩のことを思い出す。開いたシャツから覗くレノの胸元を見て、昨日抱き合った記憶が鮮明に蘇った。
「おはよう、ヒロイン」
「おっ…おはよう…ござい、ます…」
どんどん語尾が小さくなるのに合わせるように、ヒロインは恥ずかしさで顔を下に向けた。
「ま、少しずつ、だな。おっと、そろそろ行かないと。ゆっくりできなくて悪ぃ。また連絡するぞ、と」
ちゅっ、と軽い音を立てて、レノの唇が頬に触れた。ヒロインは何も言うことができないまま、レノが部屋を出ていくのを見つめていた。
その日、なんとか始業ギリギリに会社に駆け込んだヒロインは、昨日の夢のような出来事を思い出し、緩む口元を引き締めること数十回。案の定、まともに仕事ができずに一日を終え、自分のダメさ加減に溜息をつくしかなかった。
少し残業をしてから会社を出て、ヒロインはようやくメールが2通来ていることに気づいた。
1通目は昨日の深夜。公衆の面前でいきなりキスの真似事をして悪かったという、レノからの謝罪メールだった。
そして2通目。
――今日もヒロインに会いたい。仕事終わったら連絡してくれよ。
そのレノからのメールを見て、今日はすぐにメールを送ることができた。
――私も、レノさんに会いたい。
それからしばらくして来たメールをドキドキしながら開くと、それは予想していなかった相手からのメールだった。
――昨日レノが泊まったそうだな。ということは、上手くいったのか?避妊はしっかりしておけよ。
「なっ…大きなお世話!」
レノとのことで舞い上がっていてすっかり忘れていたが、ルーファウスは事細かに二人の状況を聞きたがるだろう。どうやって追求の手を逃れようか考え、ヒロインは頭を抱えるのだった。
END?
2022/07/25
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こんな偶然があるだろうか。会いたいと思っていた人が命の恩人だったなんて。そして、今こうやって二人で、手を伸ばせば届く距離にいる。
「本当に、あの子が、レノさん…?」
「あぁ」
嬉しそうにレノが笑った。そして、その手が伸ばされ、そっと頬に触れた。気づかないうちに涙が溢れていたらしい。それをレノが優しく拭ってくれた。
「また会えたなんて、運命だよな」
運命。その言葉に突き動かされるように、ヒロインは大胆にもレノに抱きついた。レノの少し早い鼓動が伝わってくる。
「どうして、すぐに教えてくれなかったんですか?」
「気づいたのが最近だからだぞ、と」
レノは先日一緒にご飯を食べに行ったあとのことを教えてくれた。あのときの失敗を改めて聞かされ、頭を掻きむしって叫び出したい衝動に駆られたが、今度はぐっとそれを抑えた。その代わり、自分の顔が更に赤くなったのがわかった。抱きついているお陰で、その顔を見られないことだけが幸いだった。
「って…やだ、ご、ごめんなさい!急に、私…」
我に返って自分の大胆な行動が恥ずかしくなり、ヒロインはレノから離れようと身体を起こした。が、今度はレノに抱きしめられ、そのまま二人でベッドの上に転がり、横向きで見つめ合った。
「ずっと、また会いたいって思ってた」
レノの手が頬を滑る。レノに触れられるのは全く嫌ではなかった。
「私も、また会ってちゃんとお礼、言いたいって思ってた。ありがとう、レノさん」
もっと触れてほしい、近くにいてほしい。男性に対してそう思ったのは初めてのことだった。それを伝えようと、ヒロインは自然に自分の手を同じようにレノの頬に伸ばし、そっと触れた。一瞬、レノが戸惑ったのがわかった。
「いいのか?」
「うん」
二人の唇が触れ合った。今度は振りではなく、しっかりと思いを確かめ合うように。レノとのキスは頭の芯まで痺れるような気持ちよさで、それはレノも同じだったのか、次第にキスだけでは物足りなくなってくる。
どちらからともなく、互いの服に手をかけた。
レノの手が身体を滑る。その手は温かく、心を穏やかにさせた。抱き合っているだけで心は満たされたが、次第に身体の奥が疼いていく。今まで自分から男性を求めたことなどなかったが、今はレノが欲しくて欲しくてたまらなかった。
「レノさん、お願い…挿れて?」
気持ち悪いとさえ思っていた愛撫も、痛くて苦痛なだけだった行為の記憶も、レノとの交わりで上書きされていく。向かい合って繋がっているだけで、自然と嬌声が漏れる。電流が身体に走ったような初めての感覚とその余韻に浸りながら、ヒロインはもう一度レノと長い長いキスを交わした。
どこかで聞き慣れた電子音が鳴っていた。
「うる…っさい…」
ヒロインは音の鳴っている方に手を伸ばし、手を振り下ろした。すると、再び部屋に静寂が戻る――はずだった。
「やべっ」
隣で誰かが動き、ぬくもりが遠ざかっていく。寂しいとぼんやり思いながらも、ヒロインの意識は再び眠りに落ちようとしていた。
「ヒロイン、仕事行かなくていいのか?」
「へ?」
マヌケな声を出して目を開けると、そこには既に身支度を整えたレノが立っていた。
「遅刻!!」
がばっと飛び起きたヒロインは、自分が一糸まとわぬ姿であることにようやく気づいた。そして、レノを見上げて昨晩のことを思い出す。開いたシャツから覗くレノの胸元を見て、昨日抱き合った記憶が鮮明に蘇った。
「おはよう、ヒロイン」
「おっ…おはよう…ござい、ます…」
どんどん語尾が小さくなるのに合わせるように、ヒロインは恥ずかしさで顔を下に向けた。
「ま、少しずつ、だな。おっと、そろそろ行かないと。ゆっくりできなくて悪ぃ。また連絡するぞ、と」
ちゅっ、と軽い音を立てて、レノの唇が頬に触れた。ヒロインは何も言うことができないまま、レノが部屋を出ていくのを見つめていた。
その日、なんとか始業ギリギリに会社に駆け込んだヒロインは、昨日の夢のような出来事を思い出し、緩む口元を引き締めること数十回。案の定、まともに仕事ができずに一日を終え、自分のダメさ加減に溜息をつくしかなかった。
少し残業をしてから会社を出て、ヒロインはようやくメールが2通来ていることに気づいた。
1通目は昨日の深夜。公衆の面前でいきなりキスの真似事をして悪かったという、レノからの謝罪メールだった。
そして2通目。
――今日もヒロインに会いたい。仕事終わったら連絡してくれよ。
そのレノからのメールを見て、今日はすぐにメールを送ることができた。
――私も、レノさんに会いたい。
それからしばらくして来たメールをドキドキしながら開くと、それは予想していなかった相手からのメールだった。
――昨日レノが泊まったそうだな。ということは、上手くいったのか?避妊はしっかりしておけよ。
「なっ…大きなお世話!」
レノとのことで舞い上がっていてすっかり忘れていたが、ルーファウスは事細かに二人の状況を聞きたがるだろう。どうやって追求の手を逃れようか考え、ヒロインは頭を抱えるのだった。
END?
2022/07/25
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