悩める彼女に愛の手を 4
ヒロイン
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同僚たちは一人二人と残業を終えて帰っていく。気づけば夜22時。オフィスにはヒロインと仕事を頼んできた同僚しかいなくなってしまった。そう遅くはならないだろうと思っていたのだが。ヒロインはちらりと鞄の中の携帯に視線を送った。
「よし、これで大丈夫だ。ヒロインさん、ありがとう」
ようやく終了の声がかかった。ヒロインはそそくさと帰り支度をし、同僚に一礼した。
「いえ。それでは、お先に失礼します」
同僚は何か言いたげだったが、ヒロインは気づかぬふりをして会社を出た。
そして、会社を出てすぐ携帯を見た。
新着メール1件。
ヒロインの心臓がどくんと大きく脈打った。
(どきどきしてきた…)
相手はレノかもしれないし、レノではないかもしれない。
ヒロインは一度深呼吸してから、携帯のロックを解除し、メールアプリを立ち上げた。
『メールでも電話でもヒロインなら大歓迎。週末、また会えるの楽しみにしてるぞ』
レノからの返信だった。うれしさのあまり、思わず叫びそうになる。ヒロインは口から出かかった声とニヤける口元を隠すように、左手を口元に当てた。
(大歓迎なんて…どうしよう、うれしすぎて顔がにやける…)
自分でもわかるぐらい、口元が緩んでいる。ルーファウスがその顔を見たなら、おもしろい顔だと言ったことだろう。
(そうだ、返事…)
「ヒロインさん、まだいたの?」
メールに返信しようとしたところに後ろから声をかけられ、ヒロインは小さく悲鳴を上げた。
「お、おつかれさまです」
ヒロインは顔を見られないよう、振り返って頭を下げた。
「タクシー呼ぶけど、一緒に乗ってく?」
「え、あの…大丈夫です!失礼します!」
ヒロインは間髪入れずに一息で言い切ると、逃げるようにその場を後にした。
同僚に下心があったかはわからない。しかし、どうしても外で異性と二人きりになる状況は避けたかった。3年前に戻ってしまう気がして。
未だによく知らない男性は苦手だった。ルーファウスに保護されてすぐは、見知らぬ男性全員が自分の身体目当てだと感じていたし、また暴力を振るわれるのではないかという恐怖に怯えていた。
そんな男性ばかりではないとルーファウスやツォンに教えられ、3年経ってようやくましにはなってきたが、身体と心を蝕む恐怖はそう簡単に消えない。
まだ、夜は怖い。
駅前まで戻ったヒロインは、改めて携帯を取り出すと、今度は電話をかけた。遅くなったときは必ず車を呼ぶようにルーファウスに言われていた。ヒロインはそれを忠実に守り、相手に場所を伝え、電話を切った。
ヒロインは一人、駅前の明るい場所で車が来るのを待った。
その間に、レノへの返信を考える。
(どうしたら、おかしくない返信になるかな…)
そう考えていたとき、朝のルーファウスの言葉が蘇る。
背伸びするなと。
(背伸び、しない…普通に…)
ヒロインはゆっくりとメールを書き始めた。
『返信ありがとうございます。レノさんとお話できてうれしいです。
でも、仕事中は返信が難しいので、毎回お返事遅くなってしまいそうです。
週末、私も楽しみにしています』
会心の出来だと送信してから、改めてメール文面を見直し、ヒロインは頭を抱えた。
何て面白みのない文章だろう!これでは事務連絡だ。
なぜ送る前に時間をおいて読み直さなかったのか、とヒロインは心底後悔した。
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「よし、これで大丈夫だ。ヒロインさん、ありがとう」
ようやく終了の声がかかった。ヒロインはそそくさと帰り支度をし、同僚に一礼した。
「いえ。それでは、お先に失礼します」
同僚は何か言いたげだったが、ヒロインは気づかぬふりをして会社を出た。
そして、会社を出てすぐ携帯を見た。
新着メール1件。
ヒロインの心臓がどくんと大きく脈打った。
(どきどきしてきた…)
相手はレノかもしれないし、レノではないかもしれない。
ヒロインは一度深呼吸してから、携帯のロックを解除し、メールアプリを立ち上げた。
『メールでも電話でもヒロインなら大歓迎。週末、また会えるの楽しみにしてるぞ』
レノからの返信だった。うれしさのあまり、思わず叫びそうになる。ヒロインは口から出かかった声とニヤける口元を隠すように、左手を口元に当てた。
(大歓迎なんて…どうしよう、うれしすぎて顔がにやける…)
自分でもわかるぐらい、口元が緩んでいる。ルーファウスがその顔を見たなら、おもしろい顔だと言ったことだろう。
(そうだ、返事…)
「ヒロインさん、まだいたの?」
メールに返信しようとしたところに後ろから声をかけられ、ヒロインは小さく悲鳴を上げた。
「お、おつかれさまです」
ヒロインは顔を見られないよう、振り返って頭を下げた。
「タクシー呼ぶけど、一緒に乗ってく?」
「え、あの…大丈夫です!失礼します!」
ヒロインは間髪入れずに一息で言い切ると、逃げるようにその場を後にした。
同僚に下心があったかはわからない。しかし、どうしても外で異性と二人きりになる状況は避けたかった。3年前に戻ってしまう気がして。
未だによく知らない男性は苦手だった。ルーファウスに保護されてすぐは、見知らぬ男性全員が自分の身体目当てだと感じていたし、また暴力を振るわれるのではないかという恐怖に怯えていた。
そんな男性ばかりではないとルーファウスやツォンに教えられ、3年経ってようやくましにはなってきたが、身体と心を蝕む恐怖はそう簡単に消えない。
まだ、夜は怖い。
駅前まで戻ったヒロインは、改めて携帯を取り出すと、今度は電話をかけた。遅くなったときは必ず車を呼ぶようにルーファウスに言われていた。ヒロインはそれを忠実に守り、相手に場所を伝え、電話を切った。
ヒロインは一人、駅前の明るい場所で車が来るのを待った。
その間に、レノへの返信を考える。
(どうしたら、おかしくない返信になるかな…)
そう考えていたとき、朝のルーファウスの言葉が蘇る。
背伸びするなと。
(背伸び、しない…普通に…)
ヒロインはゆっくりとメールを書き始めた。
『返信ありがとうございます。レノさんとお話できてうれしいです。
でも、仕事中は返信が難しいので、毎回お返事遅くなってしまいそうです。
週末、私も楽しみにしています』
会心の出来だと送信してから、改めてメール文面を見直し、ヒロインは頭を抱えた。
何て面白みのない文章だろう!これでは事務連絡だ。
なぜ送る前に時間をおいて読み直さなかったのか、とヒロインは心底後悔した。
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