恋人契約 - 破棄 -
ヒロイン
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1月も終わりに差し掛かった頃、ヒロインは定時後にリフレッシュフロアでレノを待っていた。少し遅れるかもしれないと連絡があったのは数分前のこと。今日こそは会えるだろうか。
年始以来、レノには一度も会えていない。何度かメッセージのやり取りをしたときには、ずっと社外に出ていて忙しいとのことだった。ヒロインは心に生じた小さな不安を追い出すように溜息をついた。
約束の時間はとうに過ぎ、リフレッシュフロアの人もまばらになりつつあった。今日はレノに聞きたいことがあったのだが、会えないのであれば仕方がない。ヒロインは携帯で見ていた通販サイトのバレンタイン特集のページを閉じ、そろそろ帰ろうと立ち上がった。
「なぁ、最近レノに会ったか?」
「いや」
背後から聞こえてきたレノの名前に反応したヒロインは、ゆっくりとそちらに振り返った。男性が二人、すぐ近くを歩いていた。レノの友人だろうか。
「いい加減結果を…って、ちょうどいいところにいるじゃん!」
男性の一人がにやにやと笑ってこちらを見ていた。もう一人の男とともにヒロインの方に近づいてくる。ヒロインは警戒心を顕に、男たちを軽く睨みつけた。
「おーこわ。いきなり睨まなくてもいいだろ」
男がおどけた仕草で肩を竦めた。馴れ馴れしい上に、人を馬鹿にしたような態度にヒロインの苛立ちが募る。ヒロインは眉根を寄せた。
「なぁ、レノとどこまで行ったの?ヤッた?」
「お前、それ失礼すぎ!」
男たちはゲラゲラと笑っている。
「関係ないでしょ」
失礼極まりない二人に我慢ならなくなったヒロインは強い口調で言い放つと、男たちを無視してリフレッシュフロアの出口に向かって歩き出した。
「いやいや、関係大アリ!」
男の一人がヒロインの腕を掴んで引き止めた。力任せに掴まれた腕が痛む。ヒロインは顔をしかめ、無理矢理男の手を振り払おうとしたが、更に男の指が強く腕に食い込み、振り払うことができなかった。
「俺たち賭けしててさ。あんたとレノが年内にどこまで行くかって。レノはあんたとヤるって息巻いてたけど、どうなったのか教えてくれね―から、あんたに聞こうと思ってさ」
男の言葉に、ヒロインは目を大きく見開いた。ショックで頭が真っ白になる。一瞬、完全に思考が停止したが、ここで動揺してはいけないと冷静な自分が囁いた。ヒロインは唇の内側を強く噛み、痛みに集中することで自分を保った。
「あーショックだよなぁ、賭けの対象とか。俺ならレノをぶん殴るところだけど…で、どこまでやった?」
ヒロインは腕を掴む男の目を真っ直ぐに見て、冷笑を浮かべた。
「お昼に会って話してただけ。あんたたちの期待してることなんか、何もなかった」
そう言うと、ヒロインの腕を掴んでいた男がガッツポーズをした。やっと解放されたヒロインは、男との距離を取った。
「あーあ、飯も行ってねえのかよあいつ…ほら、お前の勝ち」
もうひとりの男が財布から紙幣を取り出し、それを喜ぶ男に渡した。それを受け取った男はひらひらと紙幣を揺らし、値踏みをするようにヒロインの身体を舐め回すように見た。
「レノがヤらねぇなら、俺がヤッてもいいかな。ホテル代ぐらい出すけど?」
「…調子に乗らないで」
不快な視線が身体中にまとわりついて気持ちが悪い。ヒロインは男たちがこれ以上余計なことをする前に、早足でその場をあとにした。
もう少しで出口というところで、正面からやってきたのはレノだった。
「ヒロイン、待たせて悪かっ――」
ヒロインはレノを睨みつけた。恥ずかしさと悔しさが溢れ、その視界が滲んでいく。しかし、ここで泣くわけにはいかない。レノには絶対に弱みを見せたくなかった。こんな卑劣な男に付け入る隙を与えるものかと、気力だけで涙を堪え、ヒロインは歩く速度を緩めずにリフレッシュフロアを出た。
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年始以来、レノには一度も会えていない。何度かメッセージのやり取りをしたときには、ずっと社外に出ていて忙しいとのことだった。ヒロインは心に生じた小さな不安を追い出すように溜息をついた。
約束の時間はとうに過ぎ、リフレッシュフロアの人もまばらになりつつあった。今日はレノに聞きたいことがあったのだが、会えないのであれば仕方がない。ヒロインは携帯で見ていた通販サイトのバレンタイン特集のページを閉じ、そろそろ帰ろうと立ち上がった。
「なぁ、最近レノに会ったか?」
「いや」
背後から聞こえてきたレノの名前に反応したヒロインは、ゆっくりとそちらに振り返った。男性が二人、すぐ近くを歩いていた。レノの友人だろうか。
「いい加減結果を…って、ちょうどいいところにいるじゃん!」
男性の一人がにやにやと笑ってこちらを見ていた。もう一人の男とともにヒロインの方に近づいてくる。ヒロインは警戒心を顕に、男たちを軽く睨みつけた。
「おーこわ。いきなり睨まなくてもいいだろ」
男がおどけた仕草で肩を竦めた。馴れ馴れしい上に、人を馬鹿にしたような態度にヒロインの苛立ちが募る。ヒロインは眉根を寄せた。
「なぁ、レノとどこまで行ったの?ヤッた?」
「お前、それ失礼すぎ!」
男たちはゲラゲラと笑っている。
「関係ないでしょ」
失礼極まりない二人に我慢ならなくなったヒロインは強い口調で言い放つと、男たちを無視してリフレッシュフロアの出口に向かって歩き出した。
「いやいや、関係大アリ!」
男の一人がヒロインの腕を掴んで引き止めた。力任せに掴まれた腕が痛む。ヒロインは顔をしかめ、無理矢理男の手を振り払おうとしたが、更に男の指が強く腕に食い込み、振り払うことができなかった。
「俺たち賭けしててさ。あんたとレノが年内にどこまで行くかって。レノはあんたとヤるって息巻いてたけど、どうなったのか教えてくれね―から、あんたに聞こうと思ってさ」
男の言葉に、ヒロインは目を大きく見開いた。ショックで頭が真っ白になる。一瞬、完全に思考が停止したが、ここで動揺してはいけないと冷静な自分が囁いた。ヒロインは唇の内側を強く噛み、痛みに集中することで自分を保った。
「あーショックだよなぁ、賭けの対象とか。俺ならレノをぶん殴るところだけど…で、どこまでやった?」
ヒロインは腕を掴む男の目を真っ直ぐに見て、冷笑を浮かべた。
「お昼に会って話してただけ。あんたたちの期待してることなんか、何もなかった」
そう言うと、ヒロインの腕を掴んでいた男がガッツポーズをした。やっと解放されたヒロインは、男との距離を取った。
「あーあ、飯も行ってねえのかよあいつ…ほら、お前の勝ち」
もうひとりの男が財布から紙幣を取り出し、それを喜ぶ男に渡した。それを受け取った男はひらひらと紙幣を揺らし、値踏みをするようにヒロインの身体を舐め回すように見た。
「レノがヤらねぇなら、俺がヤッてもいいかな。ホテル代ぐらい出すけど?」
「…調子に乗らないで」
不快な視線が身体中にまとわりついて気持ちが悪い。ヒロインは男たちがこれ以上余計なことをする前に、早足でその場をあとにした。
もう少しで出口というところで、正面からやってきたのはレノだった。
「ヒロイン、待たせて悪かっ――」
ヒロインはレノを睨みつけた。恥ずかしさと悔しさが溢れ、その視界が滲んでいく。しかし、ここで泣くわけにはいかない。レノには絶対に弱みを見せたくなかった。こんな卑劣な男に付け入る隙を与えるものかと、気力だけで涙を堪え、ヒロインは歩く速度を緩めずにリフレッシュフロアを出た。
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