すれ違い、片思い。
ヒロイン
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サボりは歓迎ということで、レノは仕事のサボり場所をカフェテリアから資料室に変えた。おかげで、後輩に見つかることがなくなり、心置きなくサボれるようになったのだった。
資料室は静かで、レノとヒロイン以外に人が来ることはめったになかった。『意外と人が来る』というのは、どうやらヒロインの嘘のようだ。
ヒロインは一日の半分ぐらいは資料室にいて、いつも難しそうな本を読んでいた。レノもヒロインの真似をして適当な本を読もうかと思ったが、専門書ばかりの資料室にはレノの興味を引く本はなく、すぐに読書は諦めて睡眠に切り替えた。
数日経ったある日、珍しくヒロインが本を読んでいない日があった。
右腕を高く掲げ、そこにつけたバングルを眺めているようだった。
「キレイだな、それ」
初めて会った日以来、初めて声をかけた。
ヒロインは腕を下ろすと、はにかんだように笑った。
「ありがとう。これ、試作品なの」
バングルは小ぶりで、そしておしゃれな意匠が施されていた。神羅が軍事用として流通させているものは、いずれもごつく、無骨なものばかりだ。それとは真逆のバングルはレノの興味を引いた。
「ヒロインが作ったのか?」
ヒロインは小さく頷き、少し悲しそうな表情をした。
「上長には、そんなおしゃれなバングルなんて必要ない!って却下食らっちゃったけど」
「オレはいいと思うぞ、と。ダサいだろ、今のバングル。ちょっとつけてみていいか?」
「どうぞ」
ヒロインからバングルを受け取り、レノは自分の右腕にバングルをつけた。今、任務で使っているものよりもかなり軽い。そして、見た目もおしゃれだった。
「いいな、これ」
「よかったらどうぞ。ボツになったものだけど」
「ちょうど任務あるから試してくるぞ、と」
そうレノが言うと、ヒロインが慌てて立ち上がってバングルに手を伸ばした。
「いきなり実戦!?使い物にならなかったら――」
「でも、使わないとわからないだろ」
レノは身体を引いて、ヒロインの手を躱した。
「ま、結果楽しみに待っててくれよ」
少し青い顔をしたヒロインが諦めたように溜息をついた。
翌日、資料室に行くと、そわそわした様子のヒロインが待っていた。レノに気づくと、ヒロインが矢継ぎ早に質問してきた。
軽さ、形状は戦闘の邪魔にならなかったか?マテリアをつけたときの不都合は?不具合はなかったか?等々、レノはヒロインを宥め、一つ一つ丁寧に回答した。いいところはいいと褒め、悪いところは悪いところと改善要望を伝えると、ヒロインは目をギラギラさせてメモを取っていた。
それから二人は、軍事品の改良点やそれをもとに作ったヒロインの試作品についての意見交換をすることが増えていった。
レノは率直な感想を伝え、それについてヒロインが意見を言う。ヒロインは肯定も否定も前向きに受け取るので、議論は楽しかった。
ある日、ヒロインが息を切らせて資料室に駆け込んできた。レノを見つけるなり、ヒロインはレノの手を取り、満面の笑みで言った。
「軽量バングル、採用されたの!」
それは、二人で何度も試作と試用を重ねたものだった。
「よかったな、ヒロイン!」
レノは、ヒロインの努力が結果として現れたことを自分のことのように喜んだ。
「ありがとう、レノのおかげ!」
喜びの勢い余ってか、ヒロインが抱きついてきた。レノは何が起きたのか一瞬理解できず、腕を宙に浮かせたまま固まった。
「あ、ごめん…嬉しすぎて、つい…」
我に返って顔を真っ赤にしたヒロインの恥じらう顔を見て、レノは自分の中に生まれた感情に気づいた。
(あぁ、オレ、ヒロインのこと好きかもしれない)
しかし、レノはそれを口に出さなかった。出したら、今のいい関係が崩れそうな気がして。
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資料室は静かで、レノとヒロイン以外に人が来ることはめったになかった。『意外と人が来る』というのは、どうやらヒロインの嘘のようだ。
ヒロインは一日の半分ぐらいは資料室にいて、いつも難しそうな本を読んでいた。レノもヒロインの真似をして適当な本を読もうかと思ったが、専門書ばかりの資料室にはレノの興味を引く本はなく、すぐに読書は諦めて睡眠に切り替えた。
数日経ったある日、珍しくヒロインが本を読んでいない日があった。
右腕を高く掲げ、そこにつけたバングルを眺めているようだった。
「キレイだな、それ」
初めて会った日以来、初めて声をかけた。
ヒロインは腕を下ろすと、はにかんだように笑った。
「ありがとう。これ、試作品なの」
バングルは小ぶりで、そしておしゃれな意匠が施されていた。神羅が軍事用として流通させているものは、いずれもごつく、無骨なものばかりだ。それとは真逆のバングルはレノの興味を引いた。
「ヒロインが作ったのか?」
ヒロインは小さく頷き、少し悲しそうな表情をした。
「上長には、そんなおしゃれなバングルなんて必要ない!って却下食らっちゃったけど」
「オレはいいと思うぞ、と。ダサいだろ、今のバングル。ちょっとつけてみていいか?」
「どうぞ」
ヒロインからバングルを受け取り、レノは自分の右腕にバングルをつけた。今、任務で使っているものよりもかなり軽い。そして、見た目もおしゃれだった。
「いいな、これ」
「よかったらどうぞ。ボツになったものだけど」
「ちょうど任務あるから試してくるぞ、と」
そうレノが言うと、ヒロインが慌てて立ち上がってバングルに手を伸ばした。
「いきなり実戦!?使い物にならなかったら――」
「でも、使わないとわからないだろ」
レノは身体を引いて、ヒロインの手を躱した。
「ま、結果楽しみに待っててくれよ」
少し青い顔をしたヒロインが諦めたように溜息をついた。
翌日、資料室に行くと、そわそわした様子のヒロインが待っていた。レノに気づくと、ヒロインが矢継ぎ早に質問してきた。
軽さ、形状は戦闘の邪魔にならなかったか?マテリアをつけたときの不都合は?不具合はなかったか?等々、レノはヒロインを宥め、一つ一つ丁寧に回答した。いいところはいいと褒め、悪いところは悪いところと改善要望を伝えると、ヒロインは目をギラギラさせてメモを取っていた。
それから二人は、軍事品の改良点やそれをもとに作ったヒロインの試作品についての意見交換をすることが増えていった。
レノは率直な感想を伝え、それについてヒロインが意見を言う。ヒロインは肯定も否定も前向きに受け取るので、議論は楽しかった。
ある日、ヒロインが息を切らせて資料室に駆け込んできた。レノを見つけるなり、ヒロインはレノの手を取り、満面の笑みで言った。
「軽量バングル、採用されたの!」
それは、二人で何度も試作と試用を重ねたものだった。
「よかったな、ヒロイン!」
レノは、ヒロインの努力が結果として現れたことを自分のことのように喜んだ。
「ありがとう、レノのおかげ!」
喜びの勢い余ってか、ヒロインが抱きついてきた。レノは何が起きたのか一瞬理解できず、腕を宙に浮かせたまま固まった。
「あ、ごめん…嬉しすぎて、つい…」
我に返って顔を真っ赤にしたヒロインの恥じらう顔を見て、レノは自分の中に生まれた感情に気づいた。
(あぁ、オレ、ヒロインのこと好きかもしれない)
しかし、レノはそれを口に出さなかった。出したら、今のいい関係が崩れそうな気がして。
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