すれ違い、片思い。
ヒロイン
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出会いは最悪で、次の日はまあまあよくて、いつのまにか会うのが楽しくなっていて、オレはガラにもなく、ヒロインとの出会いをカミサマに感謝した。
色目を使ってくるわけでもなく、露出の多い服で誘ってくるわけでもない。下心なく、真っ直ぐに向き合ってくれることが嬉しかった。
初めての女性の『友人』。
それでよかったはずだったのに、いつからかヒロインの姿をしきりに追うようになった。
気になるんだ、ヒロインのことが。
62階ライブラリフロア、資料室。定時後の薄暗くなった資料室に、レノは昼に口説いた女性を連れ込んでいた。
「レノ、誰か来たら…」
「こんなとこ、誰も来るわけないぞ、と」
そう言って、レノは女性にキスをしながら、シャツのボタンを外していった。今にも胸が顕になろうかというとき、ドサッと重たいものが床に落ちる音がして、レノは手を止めてそちらを見た。
そこには、驚いた様子で立ち尽くした一人の女性がいた。彼女の足元に分厚い一冊の本が落ちていた。
「あ、すみません…!」
女性は本をその場に置いたまま、足早にその場を去っていった。
すっかり気が削がれたレノは、連れ込んだ女性の服を整えてやり、また今度と短く言ってその場を後にした。
去り際にちらりと本の表紙を見たが、どうやら何かの専門書のようで、レノには全くわからなかった。
翌日、レノは日中に資料室に足を運んだ。昨日会った女性が言いふらすとは思えないが、念のため口止めをしておこうと思ったからだ。
あの本が落ちていた場所に、すでに本はなかった。誰かが片付けたのか、それとも彼女がやってきて片付けたのか。
レノは辺りを見回した。
日中にも関わらず、資料室には誰もいない。市長がいるという話も聞いていたが、近くに人の気配はなかった。
確認のために資料室を1周してみたが、やはり誰もいなかった。
諦めてオフィスに戻ろうかと思ったとき、奥の書棚の陰から一人の女性が現れた。
声をかける前に、彼女と目が合った。
昨日のことを思い出したのだろう。彼女は顔を真っ赤にして、レノが声をかける前に駆け出した。
「おーい、誰も取って食いはしないぞ、と」
レノは早足で女性を追いかけた。
女性は一度もこちらを見ることなく、出口の方に向かって走っていた。しかし高いヒールが仇になったのか、彼女の足がもつれた。危うく転倒するところを、間一髪、レノが彼女を支えることで事なきを得た。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。で、もう逃げるのはやめか?」
レノは意地悪く笑った。
すると、彼女は恥ずかしそうな表情を浮かべ、小さく頷いた。
「すみません。反射的に逃げちゃいました」
支えていたレノの腕から手を放した彼女は、真っ直ぐこちらに向き直ると頭を下げた。
「ご迷惑をおかけしました。おかげで怪我をせずにすみました」
それでは失礼します。
そう短く挨拶をして、この場を去ろうとする彼女に、レノは話があると告げた。
彼女は一瞬怪訝そうな表情を浮かべたが、すぐに察したようだった。
「…昨日のことなら、誰にも言わないから大丈夫です」
そっけない返答をして、再び彼女がどこかに行こうとしたので、レノは慌てて言葉を紡いだ。
「いや、まぁそれもあるんだけどよ。あんた、いつもここにいるのか?」
「いつもではないですけど、それなりには。あ、ここ意外と人来るので、セックスするなら、別の場所のほうがいいですよ、レノさん」
今度は彼女が意地悪く笑い、レノはきまりの悪い表情を浮かべた。ことごとく考えが読まれている。
「忠告はありがたく受け取っとくぞ、と。ところで、あんた、名前は?」
「ヒロイン。セックスじゃなくて、サボりに来るなら歓迎しますよ」
彼女――ヒロインは明るく笑って、資料室の奥に消えていった。
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色目を使ってくるわけでもなく、露出の多い服で誘ってくるわけでもない。下心なく、真っ直ぐに向き合ってくれることが嬉しかった。
初めての女性の『友人』。
それでよかったはずだったのに、いつからかヒロインの姿をしきりに追うようになった。
気になるんだ、ヒロインのことが。
- すれ違い、片思い。 side Reno -
62階ライブラリフロア、資料室。定時後の薄暗くなった資料室に、レノは昼に口説いた女性を連れ込んでいた。
「レノ、誰か来たら…」
「こんなとこ、誰も来るわけないぞ、と」
そう言って、レノは女性にキスをしながら、シャツのボタンを外していった。今にも胸が顕になろうかというとき、ドサッと重たいものが床に落ちる音がして、レノは手を止めてそちらを見た。
そこには、驚いた様子で立ち尽くした一人の女性がいた。彼女の足元に分厚い一冊の本が落ちていた。
「あ、すみません…!」
女性は本をその場に置いたまま、足早にその場を去っていった。
すっかり気が削がれたレノは、連れ込んだ女性の服を整えてやり、また今度と短く言ってその場を後にした。
去り際にちらりと本の表紙を見たが、どうやら何かの専門書のようで、レノには全くわからなかった。
翌日、レノは日中に資料室に足を運んだ。昨日会った女性が言いふらすとは思えないが、念のため口止めをしておこうと思ったからだ。
あの本が落ちていた場所に、すでに本はなかった。誰かが片付けたのか、それとも彼女がやってきて片付けたのか。
レノは辺りを見回した。
日中にも関わらず、資料室には誰もいない。市長がいるという話も聞いていたが、近くに人の気配はなかった。
確認のために資料室を1周してみたが、やはり誰もいなかった。
諦めてオフィスに戻ろうかと思ったとき、奥の書棚の陰から一人の女性が現れた。
声をかける前に、彼女と目が合った。
昨日のことを思い出したのだろう。彼女は顔を真っ赤にして、レノが声をかける前に駆け出した。
「おーい、誰も取って食いはしないぞ、と」
レノは早足で女性を追いかけた。
女性は一度もこちらを見ることなく、出口の方に向かって走っていた。しかし高いヒールが仇になったのか、彼女の足がもつれた。危うく転倒するところを、間一髪、レノが彼女を支えることで事なきを得た。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。で、もう逃げるのはやめか?」
レノは意地悪く笑った。
すると、彼女は恥ずかしそうな表情を浮かべ、小さく頷いた。
「すみません。反射的に逃げちゃいました」
支えていたレノの腕から手を放した彼女は、真っ直ぐこちらに向き直ると頭を下げた。
「ご迷惑をおかけしました。おかげで怪我をせずにすみました」
それでは失礼します。
そう短く挨拶をして、この場を去ろうとする彼女に、レノは話があると告げた。
彼女は一瞬怪訝そうな表情を浮かべたが、すぐに察したようだった。
「…昨日のことなら、誰にも言わないから大丈夫です」
そっけない返答をして、再び彼女がどこかに行こうとしたので、レノは慌てて言葉を紡いだ。
「いや、まぁそれもあるんだけどよ。あんた、いつもここにいるのか?」
「いつもではないですけど、それなりには。あ、ここ意外と人来るので、セックスするなら、別の場所のほうがいいですよ、レノさん」
今度は彼女が意地悪く笑い、レノはきまりの悪い表情を浮かべた。ことごとく考えが読まれている。
「忠告はありがたく受け取っとくぞ、と。ところで、あんた、名前は?」
「ヒロイン。セックスじゃなくて、サボりに来るなら歓迎しますよ」
彼女――ヒロインは明るく笑って、資料室の奥に消えていった。
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