悩める彼女に愛の手を 3
ヒロイン
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先日の夢と似たようなシチュエーションだったが、当然ヒロインがレノの目を見て話すことなどできるはずもない。ヒロインはレノに聞かれたことをただ話すだけの機械と化していた。
(せっかくレノさんから誘ってくれたのに…!)
何とかしなければと思うが、言葉が喉に引っかかって出てこない。
「ヒロイン、無理しなくていいぞ、と」
少し心配そうにレノがこちらを見ている。まだ倒れるほどではなかったが、緊張を見抜かれたようで、ヒロインは少しきまりが悪くなった。
「すみません…」
「ヒロインが極度の人見知りってツォンさんから聞いたからな。少しずつ慣れてきゃいいぞ、と」
「少しずつ…?」
また、会うことがある、ということだろうか。
「まぁ、ツォンさんのときよりは、早く打ち解けてほしいけどな」
レノに笑顔を向けられ、自然と顔が赤くなった。レノの言葉の一つ一つが気になってしまう。
お店に着く前から、飛び出しそうなほど大きく早く脈打つ心臓はもう限界だ。これでは身が持たない。
(お酒飲んだら、話せるかも…!)
パーティーのときも飲んだら少し気持ちが楽になったのを思い出し、ヒロインはグラスに注がれたワインを一息に呷った。
さらにもう一杯…
突然ハイペースで飲み始めたヒロインを見ながら、レノは若干まずい状況になっていることに気づいた。
いつの間にかヒロインの目がとろんとしている。口調はシラフのときよりも砕けてきたが、少し呂律が回っていない。まだ歩けるうちに家に送らなければと店を出たものの、既に遅かったようだった。
頼りない足取りのヒロインを歩かせるわけにもいかず、レノはヒロインを背負って家まで送ることにした。
3年前とは違い、背負ったヒロインはとても楽しそうだった。気持ちよさそうに鼻歌を歌っている。酔っ払っているせいなのか、ところどころ音程が不安定で途切れ途切れではあったが、何だかとても懐かしかった。
しばらくすると、ヒロインは小さな声で歌い始めた。最初は自信なさげだったが、次第にしっかりとしたメロディを奏でていく。心地よいヒロインの声がサビを見事に歌い上げると、レノの記憶が蘇った。
それは、10年以上前に流行った曲だった。
そして、隣に住んでいたあの少女がよく歌っていた曲でもあった。
ヒロインの歌い方は、あの少女にそっくりだった。
見事に1曲歌いきったヒロインが、恥ずかしそうに言った。
「昔ね、よく歌ってたの。庭で。お母さんの帰りを待ちながら。誰も聞いてないと思ったから、結構大声で歌ってたことがあってね」
レノは柄にもなく緊張しながら、ヒロインの言葉の続きを待った。
「そしたら、お隣の男の子と目が合って。拍手してくれたんだけど、恥ずかしくて、お礼も言わずに逃げちゃった」
金髪の奥に隠れた赤い印象的な瞳。それと同じぐらい、彼女の顔が赤かったのを今でも覚えている。
「私の、一番大事な思い出なの」
ヒロインがレノの髪に触れた。
「そういえば、あの子も、レノさんと同じ、赤い髪だったっけ…また、あの子に会いたいな…そしたら、今度こそお礼を――」
後ろから寝息が聞こえてきた。歌って疲れてしまったのか、起きそうになかった。
「またすぐに会えるぞ、と」
自分との思い出が一番大事だと言われると、とてもくすぐったい気持ちになる。
明日の朝目覚めたとき、きっとヒロインは今の話を覚えていないだろうが、いつかその少年が自分だと言える日が来ることをレノは願った。
翌日の朝、ヒロインから一通のメールが来た。
末尾に「今度は本物です」と書き添えてあるのを見て、レノは思わず笑った。
――今週末、お時間があるようでしたら、先週と昨日のお礼をさせてください。
――もう一つ。ご迷惑でなければ、またメールしてもいいですか?レノさんと、もっとお話しできたらうれしいです。
END?
2020/06/07
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(せっかくレノさんから誘ってくれたのに…!)
何とかしなければと思うが、言葉が喉に引っかかって出てこない。
「ヒロイン、無理しなくていいぞ、と」
少し心配そうにレノがこちらを見ている。まだ倒れるほどではなかったが、緊張を見抜かれたようで、ヒロインは少しきまりが悪くなった。
「すみません…」
「ヒロインが極度の人見知りってツォンさんから聞いたからな。少しずつ慣れてきゃいいぞ、と」
「少しずつ…?」
また、会うことがある、ということだろうか。
「まぁ、ツォンさんのときよりは、早く打ち解けてほしいけどな」
レノに笑顔を向けられ、自然と顔が赤くなった。レノの言葉の一つ一つが気になってしまう。
お店に着く前から、飛び出しそうなほど大きく早く脈打つ心臓はもう限界だ。これでは身が持たない。
(お酒飲んだら、話せるかも…!)
パーティーのときも飲んだら少し気持ちが楽になったのを思い出し、ヒロインはグラスに注がれたワインを一息に呷った。
さらにもう一杯…
突然ハイペースで飲み始めたヒロインを見ながら、レノは若干まずい状況になっていることに気づいた。
いつの間にかヒロインの目がとろんとしている。口調はシラフのときよりも砕けてきたが、少し呂律が回っていない。まだ歩けるうちに家に送らなければと店を出たものの、既に遅かったようだった。
頼りない足取りのヒロインを歩かせるわけにもいかず、レノはヒロインを背負って家まで送ることにした。
3年前とは違い、背負ったヒロインはとても楽しそうだった。気持ちよさそうに鼻歌を歌っている。酔っ払っているせいなのか、ところどころ音程が不安定で途切れ途切れではあったが、何だかとても懐かしかった。
しばらくすると、ヒロインは小さな声で歌い始めた。最初は自信なさげだったが、次第にしっかりとしたメロディを奏でていく。心地よいヒロインの声がサビを見事に歌い上げると、レノの記憶が蘇った。
それは、10年以上前に流行った曲だった。
そして、隣に住んでいたあの少女がよく歌っていた曲でもあった。
ヒロインの歌い方は、あの少女にそっくりだった。
見事に1曲歌いきったヒロインが、恥ずかしそうに言った。
「昔ね、よく歌ってたの。庭で。お母さんの帰りを待ちながら。誰も聞いてないと思ったから、結構大声で歌ってたことがあってね」
レノは柄にもなく緊張しながら、ヒロインの言葉の続きを待った。
「そしたら、お隣の男の子と目が合って。拍手してくれたんだけど、恥ずかしくて、お礼も言わずに逃げちゃった」
金髪の奥に隠れた赤い印象的な瞳。それと同じぐらい、彼女の顔が赤かったのを今でも覚えている。
「私の、一番大事な思い出なの」
ヒロインがレノの髪に触れた。
「そういえば、あの子も、レノさんと同じ、赤い髪だったっけ…また、あの子に会いたいな…そしたら、今度こそお礼を――」
後ろから寝息が聞こえてきた。歌って疲れてしまったのか、起きそうになかった。
「またすぐに会えるぞ、と」
自分との思い出が一番大事だと言われると、とてもくすぐったい気持ちになる。
明日の朝目覚めたとき、きっとヒロインは今の話を覚えていないだろうが、いつかその少年が自分だと言える日が来ることをレノは願った。
翌日の朝、ヒロインから一通のメールが来た。
末尾に「今度は本物です」と書き添えてあるのを見て、レノは思わず笑った。
――今週末、お時間があるようでしたら、先週と昨日のお礼をさせてください。
――もう一つ。ご迷惑でなければ、またメールしてもいいですか?レノさんと、もっとお話しできたらうれしいです。
END?
2020/06/07
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