悩める彼女に愛の手を 3
ヒロイン
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おしゃれなレストランで、二人は食事をしていた。
ときには冗談を交えつつ、談笑する。
ヒロインは、真っ直ぐレノの目を見て言った。
目を見て?
ヒロインは眉をひそめた。
恥ずかしくて顔もまともに見られないのに?
「ヒロイン、悪かった」
突然目の前のレノが謝った。
どうして?
「あのとき、オレが声をかけていたら――」
あのとき?
助けてくれた日のこと?
目覚めたヒロインの目に最初に飛び込んできたのは、ルーファウスの呆れ顔だった。
「…何で?」
「『何で』じゃないだろう。覚えていないのか?」
ここはルーファウス宅だろうか。さっきまで家にいたはずだが。
レノと。
直近までの記憶が戻り、ヒロインは顔を赤くした。
「その様子だと思い出したようだな。まったく、お前は本当に…」
ルーファウスの声には、呆れと失望が入り混じっていた。
それも仕方がない。人と話をしていて、緊張して失神するなどと誰が思うだろう。本当に自分が情けなくなる。
「お前がそこまでレノを意識しているとは…メールの件は、すまなかったな」
「大丈夫…ちょっと腹立ったけど」
「そんな口がきけるなら、もう大丈夫そうだな。悪いが、もうしばらくここにいてくれ」
ルーファウスは微かに笑みを浮かべると、部屋を出ていった。
ヒロインは空腹を主張するお腹を押さえ、溜息をついた。
「…ピザ食べそこねた」
きっと、帰る頃にはピザはダメになっているだろう。ちょっと奮発したのに、とルーファウスの開いた口が塞がらないようなことを考えながら、ヒロインはベッドから起き上がった。
ベッド脇の棚に置かれている時計は、夜7時を指していた。よくもまあ6時間も目覚めなかったものだと、ヒロインは自分に呆れた。
「何か作ってもらおう…」
ルーファウスは「しばらくここにいろ」と言ったが、いつまでかはわからない。腹ごしらえをするぐらいは許されるだろう。ヒロインは部屋を出ると、キッチンの方へ向かった。
ヒロインのいる2階の客室からキッチンへ行くには、一度玄関ホールを経由する必要がある。
階段を半分ほど降りたところで話し声が聞こえてきたので、ヒロインは足を止めた。
「リストの件は誰が対応する?」
「レノとイリーナに任せようかと。事情は伏せています」
ルーファウスとツォンだ。仕事の話のようだ。知らん顔をしてキッチンに行ってしまおうと、ヒロインは足を前に出した。
「あの男が言うには、彼女は特別だったようです。自分と特別な顧客にだけ宛てがったとか。里親と彼女がいたスラムの方の組織は処理済みなので、こちらさえ対応すれば問題ないかと」
ヒロインは足を止めた。
「社長、申し訳ありません。これは私の落ち度です」
「過ぎたことは仕方がない。今回で一掃できればいい。ヒロインと過去に繋がりがあったもの全員を、な」
(私の…話…?)
ドクン、と心臓が大きく脈打った。また、自分の過去のことでルーファウスに迷惑がかかっているのだろうか。
「頼んだぞ、ツォン。ヒロインが心を煩わすことなく生きていけるようにな」
「承知しております。例の男はどうしますか?」
「私が直接手を下したいところだが、そう言うとお前は止めるだろう?」
「…はい。それは我々の仕事ですので」
「では任せる。ヒロインを傷つけたことを後悔させてから殺せ」
二人が去る足音が聞こえてきた。
しかし、ヒロインはそこから動くことができなかった。
ルーファウスの気持ちはうれしいが、未だに自分の過去が大勢を巻き込んで、手を煩わせていることが苦しかった。
何より、自分の問題を自分で解決できないことが辛い。
最早、空腹は感じなかった。
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ときには冗談を交えつつ、談笑する。
ヒロインは、真っ直ぐレノの目を見て言った。
目を見て?
ヒロインは眉をひそめた。
恥ずかしくて顔もまともに見られないのに?
「ヒロイン、悪かった」
突然目の前のレノが謝った。
どうして?
「あのとき、オレが声をかけていたら――」
あのとき?
助けてくれた日のこと?
目覚めたヒロインの目に最初に飛び込んできたのは、ルーファウスの呆れ顔だった。
「…何で?」
「『何で』じゃないだろう。覚えていないのか?」
ここはルーファウス宅だろうか。さっきまで家にいたはずだが。
レノと。
直近までの記憶が戻り、ヒロインは顔を赤くした。
「その様子だと思い出したようだな。まったく、お前は本当に…」
ルーファウスの声には、呆れと失望が入り混じっていた。
それも仕方がない。人と話をしていて、緊張して失神するなどと誰が思うだろう。本当に自分が情けなくなる。
「お前がそこまでレノを意識しているとは…メールの件は、すまなかったな」
「大丈夫…ちょっと腹立ったけど」
「そんな口がきけるなら、もう大丈夫そうだな。悪いが、もうしばらくここにいてくれ」
ルーファウスは微かに笑みを浮かべると、部屋を出ていった。
ヒロインは空腹を主張するお腹を押さえ、溜息をついた。
「…ピザ食べそこねた」
きっと、帰る頃にはピザはダメになっているだろう。ちょっと奮発したのに、とルーファウスの開いた口が塞がらないようなことを考えながら、ヒロインはベッドから起き上がった。
ベッド脇の棚に置かれている時計は、夜7時を指していた。よくもまあ6時間も目覚めなかったものだと、ヒロインは自分に呆れた。
「何か作ってもらおう…」
ルーファウスは「しばらくここにいろ」と言ったが、いつまでかはわからない。腹ごしらえをするぐらいは許されるだろう。ヒロインは部屋を出ると、キッチンの方へ向かった。
ヒロインのいる2階の客室からキッチンへ行くには、一度玄関ホールを経由する必要がある。
階段を半分ほど降りたところで話し声が聞こえてきたので、ヒロインは足を止めた。
「リストの件は誰が対応する?」
「レノとイリーナに任せようかと。事情は伏せています」
ルーファウスとツォンだ。仕事の話のようだ。知らん顔をしてキッチンに行ってしまおうと、ヒロインは足を前に出した。
「あの男が言うには、彼女は特別だったようです。自分と特別な顧客にだけ宛てがったとか。里親と彼女がいたスラムの方の組織は処理済みなので、こちらさえ対応すれば問題ないかと」
ヒロインは足を止めた。
「社長、申し訳ありません。これは私の落ち度です」
「過ぎたことは仕方がない。今回で一掃できればいい。ヒロインと過去に繋がりがあったもの全員を、な」
(私の…話…?)
ドクン、と心臓が大きく脈打った。また、自分の過去のことでルーファウスに迷惑がかかっているのだろうか。
「頼んだぞ、ツォン。ヒロインが心を煩わすことなく生きていけるようにな」
「承知しております。例の男はどうしますか?」
「私が直接手を下したいところだが、そう言うとお前は止めるだろう?」
「…はい。それは我々の仕事ですので」
「では任せる。ヒロインを傷つけたことを後悔させてから殺せ」
二人が去る足音が聞こえてきた。
しかし、ヒロインはそこから動くことができなかった。
ルーファウスの気持ちはうれしいが、未だに自分の過去が大勢を巻き込んで、手を煩わせていることが苦しかった。
何より、自分の問題を自分で解決できないことが辛い。
最早、空腹は感じなかった。
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