悩める彼女に愛の手を 2
ヒロイン
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「今日はありがとうございました」
別れ際、ヒロインはふわりと微笑んだ。作り物ではない、本物の笑顔。
3年前とは見違えるようにきれいになった。
「前も、それで助けてくれたの?」
何気ないヒロインの一言は、レノの記憶を揺り動かした。
3年前のあの日の記憶を。
スラムにある売春組織の一つがテロリストの資金源になっているとの調査結果が出て、タークスに殲滅が命じられた。小規模の組織だったので、レノが一人で担当することになった。
一網打尽にするには建物自体を爆破させるのが手っ取り早いため、レノは気付かれないように手際よく周囲に爆弾を設置していた。
準備の途中、目標が建物内にいることを確認しようと、レノは窓から中を覗いた。
そこでは、数人の男たちが一人の女性を殴っていた。何度も殴られたのか、顔はひどく腫れていたが、金髪赤眼のその女性はレノの知る人物によく似ていた。
昔、レノが10代半ばぐらいだった頃、少しの間、隣に住んでいた少女。
彼女は母親と二人暮らしだった。母親は朝から晩まで仕事をしているようで、少女はいつも一人で過ごしていた。伏し目がちで、長い髪で表情を隠していたが、あるとき見えた赤い目がとても綺麗だった。自分の髪と同じ色だったから、余計に気になったのかもしれない。
レノはいつか話しかけてみようと思っていたが、それが叶うことはなく、少女はいつのまにかいなくなってしまった。
しばらくして、彼女の母親が事故で亡くなり、彼女は施設に引き取られたと聞いた。
こんなことなら、もっと早く話しかけておけばよかった、とレノは後悔した。初恋だった。
その苦い思い出も、年月が経つにつれて記憶の奥深くにしまいこまれて、忘れ去ってしまっていた。
窓から見えた女性があの隣に住んでいた少女だという確信があったわけではない。ただ、初恋の彼女に似た色を持つ女性が暴行されているのを黙ってみていられなかった。
仲間に言えばきっとらしくないと言われるだろうが、レノは怒りに任せて全員をロッドで殴り殺した。
気づけば辺りは血の海だった。自分の手も血塗れだった。
レノは死体の服で手についた血を拭うと、隅で膝を抱えて震える女性に手を差し出した。
「大丈夫か?」
自分で言って、なんて間抜けだろうと思った。これだけ傷つけられて、大丈夫なはずはない。顔も、身体も、真っ赤に腫れて、痛くて痛くてたまらないはずだ。
「…帰りたい」
彼女はそう言って泣いた。
あのときは家に帰りたいのかと思ったが、本当は昔に戻りたかったのかもしれない。
少しは、あのとき望んだ場所に帰れたのだろうか。
「もっと早く気づいてりゃな…」
ヒロインと初恋の彼女。同じ色をした彼女たち。
同一人物とは限らないが、もう一度会って話をしたい。
誰もいないオフィスに、メールの着信音が響いた。
レノはソファから起き上がると、デスクに置いていた携帯を手にとり、メールを開いた。
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別れ際、ヒロインはふわりと微笑んだ。作り物ではない、本物の笑顔。
3年前とは見違えるようにきれいになった。
「前も、それで助けてくれたの?」
何気ないヒロインの一言は、レノの記憶を揺り動かした。
3年前のあの日の記憶を。
スラムにある売春組織の一つがテロリストの資金源になっているとの調査結果が出て、タークスに殲滅が命じられた。小規模の組織だったので、レノが一人で担当することになった。
一網打尽にするには建物自体を爆破させるのが手っ取り早いため、レノは気付かれないように手際よく周囲に爆弾を設置していた。
準備の途中、目標が建物内にいることを確認しようと、レノは窓から中を覗いた。
そこでは、数人の男たちが一人の女性を殴っていた。何度も殴られたのか、顔はひどく腫れていたが、金髪赤眼のその女性はレノの知る人物によく似ていた。
昔、レノが10代半ばぐらいだった頃、少しの間、隣に住んでいた少女。
彼女は母親と二人暮らしだった。母親は朝から晩まで仕事をしているようで、少女はいつも一人で過ごしていた。伏し目がちで、長い髪で表情を隠していたが、あるとき見えた赤い目がとても綺麗だった。自分の髪と同じ色だったから、余計に気になったのかもしれない。
レノはいつか話しかけてみようと思っていたが、それが叶うことはなく、少女はいつのまにかいなくなってしまった。
しばらくして、彼女の母親が事故で亡くなり、彼女は施設に引き取られたと聞いた。
こんなことなら、もっと早く話しかけておけばよかった、とレノは後悔した。初恋だった。
その苦い思い出も、年月が経つにつれて記憶の奥深くにしまいこまれて、忘れ去ってしまっていた。
窓から見えた女性があの隣に住んでいた少女だという確信があったわけではない。ただ、初恋の彼女に似た色を持つ女性が暴行されているのを黙ってみていられなかった。
仲間に言えばきっとらしくないと言われるだろうが、レノは怒りに任せて全員をロッドで殴り殺した。
気づけば辺りは血の海だった。自分の手も血塗れだった。
レノは死体の服で手についた血を拭うと、隅で膝を抱えて震える女性に手を差し出した。
「大丈夫か?」
自分で言って、なんて間抜けだろうと思った。これだけ傷つけられて、大丈夫なはずはない。顔も、身体も、真っ赤に腫れて、痛くて痛くてたまらないはずだ。
「…帰りたい」
彼女はそう言って泣いた。
あのときは家に帰りたいのかと思ったが、本当は昔に戻りたかったのかもしれない。
少しは、あのとき望んだ場所に帰れたのだろうか。
「もっと早く気づいてりゃな…」
ヒロインと初恋の彼女。同じ色をした彼女たち。
同一人物とは限らないが、もう一度会って話をしたい。
誰もいないオフィスに、メールの着信音が響いた。
レノはソファから起き上がると、デスクに置いていた携帯を手にとり、メールを開いた。
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