悩める彼女に愛の手を
ヒロイン
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「少し、テラスで風に当たってきますね」
一通りの挨拶をこなしたあと、ヒロインはルーファウスに断ってその場を離れた。
レノはこちらを一瞥しただけだった。
テラスに向かう途中、給仕がワインを運んでいたので、グラスを一つもらった。
ヒロインはテラスに出ると、誰もいないのを確認して、一気にワインを呷った。
「もう全然、話す機会ないじゃん!!」
ヒロインはテラスの手すりに肘をつくと、大きく溜息をついた。
「あぁもう、顔疲れた…」
ずっと作っていた笑顔。顔の筋肉がその形で硬直してしまったかのようだ。
レノは、作り笑いを貼り付けた女の顔を見てどう思っただろうか。
つまらない女。絶対そう思ったに決まっている。
「別の日にしてもらったらよかった…」
昨日、ヒロインはルーファウスに、レノに紹介してほしいと頼んでいた。
今日ならきれいなドレスを着て会えると思ったので、急遽ルーファウスにお願いしたのだが、何もかも裏目に出ている。
ルーファウスはもう少し力を貸してくれると言ったが、この状態からの挽回は不可能に思えた。
「お酒飲まなきゃやってらんない…」
けれど、パーティー会場で浴びるほど飲むわけにはいかない。
抱えたフラストレーションを少しでも吐き出すつもりで、ヒロインは再び大きな溜息をつくのだった。
ヒロインは一度、3年前にレノと会っている。
ツォンに連れられてルーファウスに会う前、まだスラムで身体を売っていた頃のことだった。
元締めに売上を誤魔化したと言いがかりをつけられて、こっぴどく殴られていたとき、レノはやってきた。ヒロインのいた売春組織が反神羅組織の資金源だったらしく、レノはなんの躊躇もなく全員を殺した。ヒロインを除いて。
「大丈夫か?」
母が死んで以来、初めて差し伸べられた手。ヒロインは恐る恐るその手を取った。
彼は怪我をしたヒロインを背負って家まで送り、怪我の治療をすると、何も言わずに出ていった。
そのときは、名前を聞けなかった。ただ、燃えるような赤毛と端正な顔立ちは、ずっと忘れることができなかった。
それからしばらくしてルーファウスの世話になることになり、命の恩人の彼がツォンの部下だと知ったのだった。
テラスから室内を眺めると、ルーファウスの周りにはまた人だかりができていた。いつまでもテラスにいるわけにはいかないようだ。
ヒロインは軽く頬をマッサージすると、もう一度笑顔を作った。
「お前、社長の従妹なんだって?」
突然、知らない中年男性が話しかけてきた。
「失礼ですが、どちらさまですか?」
酔っ払っているのだろうか。男性の顔は赤く、目はやや焦点があっていない。
ヒロインは警戒して、男から距離を取った。
「何だよ、あれだけ貢いでやったのに、薄情な姫君だなぁ」
姫。ヒロインが売られた売春組織での女を指す言葉。
「何で…」
「社長の従妹が売春婦とは、いいネタができたなぁ。社長はあんたの秘密にいくら払ってくれるかな?」
ヒロインは目の前が真っ暗になるのを感じた。このままでは、ルーファウスに迷惑がかかる。
「…どうしたら、黙っていてもらえますか?」
「そりゃ、そのきれいな身体で払うしかないだろ?」
男がいやらしい笑みを浮かべ、ヒロインに手を伸ばした。
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一通りの挨拶をこなしたあと、ヒロインはルーファウスに断ってその場を離れた。
レノはこちらを一瞥しただけだった。
テラスに向かう途中、給仕がワインを運んでいたので、グラスを一つもらった。
ヒロインはテラスに出ると、誰もいないのを確認して、一気にワインを呷った。
「もう全然、話す機会ないじゃん!!」
ヒロインはテラスの手すりに肘をつくと、大きく溜息をついた。
「あぁもう、顔疲れた…」
ずっと作っていた笑顔。顔の筋肉がその形で硬直してしまったかのようだ。
レノは、作り笑いを貼り付けた女の顔を見てどう思っただろうか。
つまらない女。絶対そう思ったに決まっている。
「別の日にしてもらったらよかった…」
昨日、ヒロインはルーファウスに、レノに紹介してほしいと頼んでいた。
今日ならきれいなドレスを着て会えると思ったので、急遽ルーファウスにお願いしたのだが、何もかも裏目に出ている。
ルーファウスはもう少し力を貸してくれると言ったが、この状態からの挽回は不可能に思えた。
「お酒飲まなきゃやってらんない…」
けれど、パーティー会場で浴びるほど飲むわけにはいかない。
抱えたフラストレーションを少しでも吐き出すつもりで、ヒロインは再び大きな溜息をつくのだった。
ヒロインは一度、3年前にレノと会っている。
ツォンに連れられてルーファウスに会う前、まだスラムで身体を売っていた頃のことだった。
元締めに売上を誤魔化したと言いがかりをつけられて、こっぴどく殴られていたとき、レノはやってきた。ヒロインのいた売春組織が反神羅組織の資金源だったらしく、レノはなんの躊躇もなく全員を殺した。ヒロインを除いて。
「大丈夫か?」
母が死んで以来、初めて差し伸べられた手。ヒロインは恐る恐るその手を取った。
彼は怪我をしたヒロインを背負って家まで送り、怪我の治療をすると、何も言わずに出ていった。
そのときは、名前を聞けなかった。ただ、燃えるような赤毛と端正な顔立ちは、ずっと忘れることができなかった。
それからしばらくしてルーファウスの世話になることになり、命の恩人の彼がツォンの部下だと知ったのだった。
テラスから室内を眺めると、ルーファウスの周りにはまた人だかりができていた。いつまでもテラスにいるわけにはいかないようだ。
ヒロインは軽く頬をマッサージすると、もう一度笑顔を作った。
「お前、社長の従妹なんだって?」
突然、知らない中年男性が話しかけてきた。
「失礼ですが、どちらさまですか?」
酔っ払っているのだろうか。男性の顔は赤く、目はやや焦点があっていない。
ヒロインは警戒して、男から距離を取った。
「何だよ、あれだけ貢いでやったのに、薄情な姫君だなぁ」
姫。ヒロインが売られた売春組織での女を指す言葉。
「何で…」
「社長の従妹が売春婦とは、いいネタができたなぁ。社長はあんたの秘密にいくら払ってくれるかな?」
ヒロインは目の前が真っ暗になるのを感じた。このままでは、ルーファウスに迷惑がかかる。
「…どうしたら、黙っていてもらえますか?」
「そりゃ、そのきれいな身体で払うしかないだろ?」
男がいやらしい笑みを浮かべ、ヒロインに手を伸ばした。
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