悩める彼女に愛の手を
ヒロイン
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レノは車に寄りかかりながら、大きな欠伸をした。
何年ぶりかに締めたネクタイが煩わしかった。
朝出勤すると、突然ツォンから社長の護衛としてパーティーに同行しろと言われた。公式の場なので、正装しろとも。
そのせいでネクタイをする羽目になったのだが、今すぐ外してしまいたい。
少し緩めようとネクタイに手をかけようとしたとき、社長が家から出てきた。
「待たせたな」
もう一人、ルーファウスに続いて、一人の女性が現れた。上品な濃紺のパーティドレスに身を包んだ、金髪の女性。綺麗な人だった。社長の恋人だろうか。
「レノは初めてだったな。彼女は腹違いの妹のヒロインだ。今日は従妹として同行する」
「は?」
寝耳に水だった。社長の妹?腹違いの?確かに、よくよく見れば似ているような気もする。
「は、初めまして、レノさん。ヒロインと申します。本日は、よろしくお願い致します」
言葉遣いも仕草も品があり、レノには彼女がとてもまぶしく映った。住む世界が違う。
「あぁ、よろしく」
レノはそっけなく返事をすると、二人を車に乗せて会場に向かった。
その車中、後部座席で二人は何やら小声で話をしていた。聞き耳を立てるのはよくないと思ったが、社長が妹とどんな話をするのかは興味があった。
「今日は飲みすぎるなよ」
「はい、気をつけます」
「大丈夫だとは思うが、立ち居振る舞いにも気をつけろ」
「承知しています」
「招待客に不審な者はいないはずだが、十分気をつけろ。私とレノから離れるな」
「…心得ております」
何だか他人行儀な会話だった。あまり仲がよくないのだろうか。
「これで約束は果たしたということでいいか?」
「え…いや、それは…ちょっとまだ不十分な気が…しませんかね?」
ルーファウスが吹き出した。
「仕方ない、もう少し力を貸してやろう」
「…ありがとうございます」
(社長、あんなふうに笑うんだな)
ミラー越しに社長の新たな一面を見たレノは、不思議な気分に陥った。やはり、腹違いといえども、身内は別ということか。
一方、ヒロインの表情はよく見えなかった。俯いていたのもあるが、できるだけミラーに映らないようにしているようでもあった。
パーティー会場に入ると、ルーファウスの周囲にはすぐ人だかりができた。
レノは少しだけ離れて二人を見守る。
ルーファウスがこういった場に慣れているのは当然として、隣にいるヒロインも大したものだった。常に笑顔で、物腰柔らかく応対している。ただ、作り物臭い笑顔だと思った。こういう場にいる以上は仕方ないのかもしれないが。
自分に求められている役割を忠実にこなす、きれいなお人形。
守る方としては手がかからなくていいが、あまり一人の人間としての興味は湧かなかった。
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何年ぶりかに締めたネクタイが煩わしかった。
朝出勤すると、突然ツォンから社長の護衛としてパーティーに同行しろと言われた。公式の場なので、正装しろとも。
そのせいでネクタイをする羽目になったのだが、今すぐ外してしまいたい。
少し緩めようとネクタイに手をかけようとしたとき、社長が家から出てきた。
「待たせたな」
もう一人、ルーファウスに続いて、一人の女性が現れた。上品な濃紺のパーティドレスに身を包んだ、金髪の女性。綺麗な人だった。社長の恋人だろうか。
「レノは初めてだったな。彼女は腹違いの妹のヒロインだ。今日は従妹として同行する」
「は?」
寝耳に水だった。社長の妹?腹違いの?確かに、よくよく見れば似ているような気もする。
「は、初めまして、レノさん。ヒロインと申します。本日は、よろしくお願い致します」
言葉遣いも仕草も品があり、レノには彼女がとてもまぶしく映った。住む世界が違う。
「あぁ、よろしく」
レノはそっけなく返事をすると、二人を車に乗せて会場に向かった。
その車中、後部座席で二人は何やら小声で話をしていた。聞き耳を立てるのはよくないと思ったが、社長が妹とどんな話をするのかは興味があった。
「今日は飲みすぎるなよ」
「はい、気をつけます」
「大丈夫だとは思うが、立ち居振る舞いにも気をつけろ」
「承知しています」
「招待客に不審な者はいないはずだが、十分気をつけろ。私とレノから離れるな」
「…心得ております」
何だか他人行儀な会話だった。あまり仲がよくないのだろうか。
「これで約束は果たしたということでいいか?」
「え…いや、それは…ちょっとまだ不十分な気が…しませんかね?」
ルーファウスが吹き出した。
「仕方ない、もう少し力を貸してやろう」
「…ありがとうございます」
(社長、あんなふうに笑うんだな)
ミラー越しに社長の新たな一面を見たレノは、不思議な気分に陥った。やはり、腹違いといえども、身内は別ということか。
一方、ヒロインの表情はよく見えなかった。俯いていたのもあるが、できるだけミラーに映らないようにしているようでもあった。
パーティー会場に入ると、ルーファウスの周囲にはすぐ人だかりができた。
レノは少しだけ離れて二人を見守る。
ルーファウスがこういった場に慣れているのは当然として、隣にいるヒロインも大したものだった。常に笑顔で、物腰柔らかく応対している。ただ、作り物臭い笑顔だと思った。こういう場にいる以上は仕方ないのかもしれないが。
自分に求められている役割を忠実にこなす、きれいなお人形。
守る方としては手がかからなくていいが、あまり一人の人間としての興味は湧かなかった。
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