明日、もし死んだら
ヒロイン
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インカムを通して聞こえた銃声。
あれ以降、応答がない。
ヒロインは死んでしまったのか?
最後の会話が「明日死んだら」なんて笑えない。
「狙撃班が残党に襲撃された!現在交戦中!」
部隊全員に通信が入る。
すぐに座標が共有され、部隊が移動を始めた。
急いていいことなどないと、経験上わかってはいる。
冷静にならなければと言い聞かせてみても、心が逸る。
状況は?
ヒロインは無事なのか?
そのとき、通信が入った。
「こちらA班、観測手が撃たれた。出血がひどい。敵は10人、3人倒した。現在、岩陰に隠れているが、あまりもちそうにない。救援を」
ヒロインの声だった。
レノは、ヒロインが生きていることにほっとし、胸を撫で下ろした。
部隊が交戦中の現場に着いたのは、通信から2-3分後のことだった。
レノたちはヒロインの救出に向かう。
小高い丘の岩陰に、ヒロインが潜んでいるのが見えた。
そこに近づく、一つの人影も。
レノの心臓が大きく脈打った。
ヒロインは、気づいているのか?
迷っている暇はなかった。
「ヒロイン、敵だ!」
レノは声を張り上げた。
2発の銃声が轟いた。
ヒロインの身体がゆっくりと傾ぎ、倒れて見えなくなった。
一方敵は、脚は止まったが、倒れてはいない。
レノは丘を駆け上がり、敵に接近すると一撃で仕留めた。
「ヒロイン!」
レノはヒロインに駆け寄ると、仰向けに倒れるヒロインの服を開いた。
銃弾は、防弾チョッキで止まっていた。
「ヒロイン、大丈夫か?」
ヒロインが薄く目を開けた。
「あぁ、さすが幸運のお守り…助かった」
ヒロインの首にかかったネックレス。
それは、チェーンに通された2つの指輪だった。
大きいものと小さいもの――指輪の裏には、二人の名前が彫られていた。
レノとヒロイン。
そういえば、別れる寸前、指輪の話をしていたような気がする。
結局、それはレノの手に渡ることはなかったが。
「これ、身につけているときはいいことがあるの。守ってくれて、ありがとう」
そう言って、ヒロインは気を失った。
レノはヒロインの病室にいた。
幸い、肋骨の骨折だけで済んだようだったが、念のため、数日入院するらしい。
ヒロインが身につけていた指輪を弄びながら、レノはヒロインが目を覚ますのを待っていた。
――ねえ、渡したいものがあるの。指輪、なんだけど…
あのとき、どう答えたんだったか。
「あれ、レノ…?」
「よお」
ヒロインの視線がレノの手元に向かう。
「ちょっと!それ、返して!」
慌てた様子でベッドから体を起こしたヒロインが、再びベッドに倒れ込んだ。
「肋骨骨折らしいぞ、と」
「そういうことは、先に言って…!」
「ほらよ」
レノはチェーンから小さい方の指輪を抜き、ヒロインの左薬指にはめた。
「こっちは、オレがもらっとくぞ、と」
「何で!返してよ!」
「何でって、ペアリング一人で持ってても意味ないだろ」
「は?」
ヒロインは間抜けな顔でこちらを見ている。
「やり直したい、ってことだぞ、と」
レノは照れくさくなってそっぽを向いた。
視界の端にいるヒロインは、顔を真っ赤にしていた。
「じゃあ、それ返して」
ヒロインが手をこちらに伸ばした。
「それは私の幸運のお守り。ペアリング、新しいの買って」
「あぁ、お安い御用だぞ、と」
レノは大きい方のリングもヒロインの左薬指にはめ、その指に軽くキスをした。
END
2020/05/24
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あれ以降、応答がない。
ヒロインは死んでしまったのか?
最後の会話が「明日死んだら」なんて笑えない。
「狙撃班が残党に襲撃された!現在交戦中!」
部隊全員に通信が入る。
すぐに座標が共有され、部隊が移動を始めた。
急いていいことなどないと、経験上わかってはいる。
冷静にならなければと言い聞かせてみても、心が逸る。
状況は?
ヒロインは無事なのか?
そのとき、通信が入った。
「こちらA班、観測手が撃たれた。出血がひどい。敵は10人、3人倒した。現在、岩陰に隠れているが、あまりもちそうにない。救援を」
ヒロインの声だった。
レノは、ヒロインが生きていることにほっとし、胸を撫で下ろした。
部隊が交戦中の現場に着いたのは、通信から2-3分後のことだった。
レノたちはヒロインの救出に向かう。
小高い丘の岩陰に、ヒロインが潜んでいるのが見えた。
そこに近づく、一つの人影も。
レノの心臓が大きく脈打った。
ヒロインは、気づいているのか?
迷っている暇はなかった。
「ヒロイン、敵だ!」
レノは声を張り上げた。
2発の銃声が轟いた。
ヒロインの身体がゆっくりと傾ぎ、倒れて見えなくなった。
一方敵は、脚は止まったが、倒れてはいない。
レノは丘を駆け上がり、敵に接近すると一撃で仕留めた。
「ヒロイン!」
レノはヒロインに駆け寄ると、仰向けに倒れるヒロインの服を開いた。
銃弾は、防弾チョッキで止まっていた。
「ヒロイン、大丈夫か?」
ヒロインが薄く目を開けた。
「あぁ、さすが幸運のお守り…助かった」
ヒロインの首にかかったネックレス。
それは、チェーンに通された2つの指輪だった。
大きいものと小さいもの――指輪の裏には、二人の名前が彫られていた。
レノとヒロイン。
そういえば、別れる寸前、指輪の話をしていたような気がする。
結局、それはレノの手に渡ることはなかったが。
「これ、身につけているときはいいことがあるの。守ってくれて、ありがとう」
そう言って、ヒロインは気を失った。
レノはヒロインの病室にいた。
幸い、肋骨の骨折だけで済んだようだったが、念のため、数日入院するらしい。
ヒロインが身につけていた指輪を弄びながら、レノはヒロインが目を覚ますのを待っていた。
――ねえ、渡したいものがあるの。指輪、なんだけど…
あのとき、どう答えたんだったか。
「あれ、レノ…?」
「よお」
ヒロインの視線がレノの手元に向かう。
「ちょっと!それ、返して!」
慌てた様子でベッドから体を起こしたヒロインが、再びベッドに倒れ込んだ。
「肋骨骨折らしいぞ、と」
「そういうことは、先に言って…!」
「ほらよ」
レノはチェーンから小さい方の指輪を抜き、ヒロインの左薬指にはめた。
「こっちは、オレがもらっとくぞ、と」
「何で!返してよ!」
「何でって、ペアリング一人で持ってても意味ないだろ」
「は?」
ヒロインは間抜けな顔でこちらを見ている。
「やり直したい、ってことだぞ、と」
レノは照れくさくなってそっぽを向いた。
視界の端にいるヒロインは、顔を真っ赤にしていた。
「じゃあ、それ返して」
ヒロインが手をこちらに伸ばした。
「それは私の幸運のお守り。ペアリング、新しいの買って」
「あぁ、お安い御用だぞ、と」
レノは大きい方のリングもヒロインの左薬指にはめ、その指に軽くキスをした。
END
2020/05/24
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