彼の隣、彼女の隣 4
ヒロイン
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レノはにやける口元を抑えた。
(ヒロインが、オレに会いたかったって…?)
その言葉が素直に嬉しい。
が、直接顔を見て聞きたかったという残念な気持ちもある。
レノは寝室から出ると、洗面所の方に向かった。この家の作りで、隠れるならそこだろうと予想して。
案の定、洗面所は締め切られ、ドアの隙間から少し光が漏れていた。
「なぁ、ヒロイン。出てきて話しようぜ?」
「ダメです無理です!恥ずかしくて、絶対無理…」
「いつまでもそうしてるわけにいかないだろ?」
「でも、い、今は無理です!もうどうしていいかわかんないし、死にそう…」
子供のように駄々をこねるヒロインがおかしく、レノは笑いを噛み殺すのに必死だった。
笑ったら、きっとヒロインは拗ねて出てこないだろうから。
「オレ、今日休みなんだよな。ヒロインと一緒にケーキ食べようと思ってたんだけど、どうする?」
1ヶ月前の約束。
ヒロインはまだ覚えているだろうか。
1分ほどの沈黙のあと、洗面所の扉が少し開いた。半分ほど、顔が覗いた。
「一緒に、食べたい、です」
床に座り込んだヒロインがこちらを見上げる。
保護欲を掻き立てられるその表情。
今すぐ抱き締められたらいいのにとも思う。が、ヒロインの反応からしても、それはまだまだ早いようだ。
「じゃあ、また昼前に戻ってくるぞ、と。そのときは、ちゃんと顔見せてくれよ」
「ど、努力します…」
ヒロインが小さく頷いた。
部屋に戻ってシャワーを浴び、身支度を整えたレノは、洋菓子屋の開店時間に間に合うように家を出た。
前回同様、電車で向かう。
駅を降りたところで、レノはふと思い立ち、ヒロインに電話した。
『…はい』
まだ少しぎこちない様子のヒロインに、レノは苦笑する。
「ヒロイン、何か買ってくものあるか?」
『あっ…ありがとうございます。でも、大丈夫です。今、材料買うためにスーパーに来たので』
「そうか。楽しみにしてるぞ、と」
ヒロインがまた手料理を振る舞ってくれるとあっては、早く帰らなければならない。
レノは洋菓子店でケーキを買うと、すぐに電車に乗った。 今回はヒロインの好みもわかっていたので、おいしかったと言っていたケーキと、好みと思われるものをいくつか購入した。
自宅の最寄駅に着くと、駅前のスーパーからヒロインが出てくるのが見えた。
レノは早足でヒロインに近づいた。
「重いだろ?荷物持つぞ、と」
後ろから声を掛けると、ヒロインが小さな悲鳴を上げた。
「驚きすぎだぞ、と」
「い、いきなり声かけられたら、誰だって驚きます!」
それにしても、驚きすぎだと思うが。
「ほら、荷物かせよ」
レノはヒロインの持つ袋に手を伸ばした。軽く、二人の手が触れる。
ヒロインが声にならない声を上げた。
あまりに初すぎるヒロインの反応が面白い。このまま手を握ったら、ヒロインが卒倒してしまいそうだ。
「レノさん、私を殺す気ですか…!」
荷物を手渡したヒロインが言った。真っ赤な顔で呼吸を整えようとしている姿を見ると、本当にその場で倒れてしまうんじゃないかと思ってしまう。
「やっぱり面白いぞ、と」
「私は、あんまり面白くないです。心臓に悪すぎます」
隣を歩くヒロインがそっぽを向いて言った
「死なれたら困るし、気をつけることにするぞ、と」
レノはヒロインと拳一つ分ぐらい間を開けて歩いた。
この距離なら、ヒロインも大丈夫らしい。
(ま、一歩前進か)
先はまだまだ長そうである。
To be continued...?
2020/05/21
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(ヒロインが、オレに会いたかったって…?)
その言葉が素直に嬉しい。
が、直接顔を見て聞きたかったという残念な気持ちもある。
レノは寝室から出ると、洗面所の方に向かった。この家の作りで、隠れるならそこだろうと予想して。
案の定、洗面所は締め切られ、ドアの隙間から少し光が漏れていた。
「なぁ、ヒロイン。出てきて話しようぜ?」
「ダメです無理です!恥ずかしくて、絶対無理…」
「いつまでもそうしてるわけにいかないだろ?」
「でも、い、今は無理です!もうどうしていいかわかんないし、死にそう…」
子供のように駄々をこねるヒロインがおかしく、レノは笑いを噛み殺すのに必死だった。
笑ったら、きっとヒロインは拗ねて出てこないだろうから。
「オレ、今日休みなんだよな。ヒロインと一緒にケーキ食べようと思ってたんだけど、どうする?」
1ヶ月前の約束。
ヒロインはまだ覚えているだろうか。
1分ほどの沈黙のあと、洗面所の扉が少し開いた。半分ほど、顔が覗いた。
「一緒に、食べたい、です」
床に座り込んだヒロインがこちらを見上げる。
保護欲を掻き立てられるその表情。
今すぐ抱き締められたらいいのにとも思う。が、ヒロインの反応からしても、それはまだまだ早いようだ。
「じゃあ、また昼前に戻ってくるぞ、と。そのときは、ちゃんと顔見せてくれよ」
「ど、努力します…」
ヒロインが小さく頷いた。
部屋に戻ってシャワーを浴び、身支度を整えたレノは、洋菓子屋の開店時間に間に合うように家を出た。
前回同様、電車で向かう。
駅を降りたところで、レノはふと思い立ち、ヒロインに電話した。
『…はい』
まだ少しぎこちない様子のヒロインに、レノは苦笑する。
「ヒロイン、何か買ってくものあるか?」
『あっ…ありがとうございます。でも、大丈夫です。今、材料買うためにスーパーに来たので』
「そうか。楽しみにしてるぞ、と」
ヒロインがまた手料理を振る舞ってくれるとあっては、早く帰らなければならない。
レノは洋菓子店でケーキを買うと、すぐに電車に乗った。 今回はヒロインの好みもわかっていたので、おいしかったと言っていたケーキと、好みと思われるものをいくつか購入した。
自宅の最寄駅に着くと、駅前のスーパーからヒロインが出てくるのが見えた。
レノは早足でヒロインに近づいた。
「重いだろ?荷物持つぞ、と」
後ろから声を掛けると、ヒロインが小さな悲鳴を上げた。
「驚きすぎだぞ、と」
「い、いきなり声かけられたら、誰だって驚きます!」
それにしても、驚きすぎだと思うが。
「ほら、荷物かせよ」
レノはヒロインの持つ袋に手を伸ばした。軽く、二人の手が触れる。
ヒロインが声にならない声を上げた。
あまりに初すぎるヒロインの反応が面白い。このまま手を握ったら、ヒロインが卒倒してしまいそうだ。
「レノさん、私を殺す気ですか…!」
荷物を手渡したヒロインが言った。真っ赤な顔で呼吸を整えようとしている姿を見ると、本当にその場で倒れてしまうんじゃないかと思ってしまう。
「やっぱり面白いぞ、と」
「私は、あんまり面白くないです。心臓に悪すぎます」
隣を歩くヒロインがそっぽを向いて言った
「死なれたら困るし、気をつけることにするぞ、と」
レノはヒロインと拳一つ分ぐらい間を開けて歩いた。
この距離なら、ヒロインも大丈夫らしい。
(ま、一歩前進か)
先はまだまだ長そうである。
To be continued...?
2020/05/21
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